第三十二話 設計師 ページ34
綾辻行人は或る扉の前に立つ。
「聞こえるか、設計師。」
「凡ての問題を解いた。最早謎は残っていない筈だ。」
「選べ、俺を招くか、誰にも会わず世界の終わり迄其処で引き籠もるか。」
「《……入れ》」
扉は開いた。
中は薄暗く、複数もあるモニターだけが光っていた。
そのモニターの前に誰かが座っているのが見える。
「見事な館だった。流石は設計師といった所だ。」
綾辻行人はゆっくりと歩く。
すると、入ってきた扉は閉まった。
「……その椅子の向こうに居るのだろう?此方を向け、設計師」
顔を覗いた。
血の気の無い肌、やせこけた顔……
「──死んでいる。」
「矢張りそうか……設計師ほどの男を殺せる人間は、俺の知る限り一人しかいない。」
「殺したのは、お前だな?」
────京極。
そう云うと京極夏彦……本人が現れた。
「さて、これが最後の問題じゃ。儂は如何にして彼を殺したか?」
「……これまでの経緯を総合すれば明らかだ」
台詞を読むように淡々とした口調で話す。
長々と話しているが、簡単に言ってしまえば、数日前に泥棒を唆してこの館を停電させたのだ。
設計師は停電を想定していなかった為、自動ドアであった扉は開かず、餓死によって椅子の上でその生涯を終えた。
更に綾辻行人はもう一つ見抜いていた。
其れは────あらゆる建物を破壊する周波数など最初から存在していなかったことだった。
設計師は只、貧困や差別や対立を、消したいだけだったのだ。
全世界が協力すれば消し去れるその問題を、無理矢理脅して解体させようとした。
「お前が殺した。その悪意と邪知で。」
「ではそれを証明出来るか?」
京極夏彦は悪人面で笑う。綾辻行人はその問いに無言だった。
「出来ぬであろう……これまでもそうであった。常にな。君と儂との戦いは。」
「ああ。今回もお前は自発的に犯罪を起こすよう、一般人を誘導している。」
少し考えこむと、また口を開いた。
「だが判らないのはその先だ。殺した後に何故俺を招き、クイズ大会などを開かせた?」
「決まっておろう。」
「君への……誕生日プレゼントじゃ。」
京極夏彦はニヤリと口角が歪む。
「貴様……」
────そう云って綾辻行人は、恨みのこもった眼差しを向けた。
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蒼月(プロフ) - ┏( .-. ┏ ) ┓ウリャさん» コメントありがとうございます!面白いと言って下さりとても嬉しいです…!モチベが無くなっていた為、とても助かりました。王子さま良いですよね…私もこの本が大好きなんです…! (9月4日 17時) (レス) id: 371a01970c (このIDを非表示/違反報告)
┏( .-. ┏ ) ┓ウリャ - めっちゃ面白いです!!!しかも異能力名が自分もめっちゃ好きな本なので更に興奮(?)しました。有難う御座います!!! (9月4日 0時) (レス) id: 2c963f022d (このIDを非表示/違反報告)
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