第二十九話 運命 ページ31
綾辻行人は無言で見つめている。
「政府にとって、貴方は貴重な探偵である以上に、危険な異能者だから。暴走の危険をはらむ爆弾だから。」
「だから、エージェントとして考えるなら、私は貴方の相棒になってはならない。」
「でも、ひょっとしたら。」
辻村深月は深く息を吸ってから、言葉を発した。
「ひょっとしたら……上層部はこうなることを判っていたのかも。」
「ただのエージェントに貴方の監視は務まらない。それ以上の何か、強い存在でないと。」
「母が死んだ今、貴方の中にしか母はいない。私はそれを護りたいと思う。」
「その為には、今ここで死ぬ訳には行きません。」
「────誓います。」
「政府が、いえ、運命が、私に貴方を護れと命じるなら……私はそれに従いましょう。」
彼女の顔には、固唾を吞んでいるような真剣な色が表れていた。
「よく云った。録音したぞ。」
彼は笑った……そして扉まで歩く。
その気配を感じ、Aも目を開け、耳を塞いでいた手を外した。
────彼は扉を開けたのだった。
「はあっ……！？扉、開いてる……！？」
彼女は唯、綾辻行人に踊らされていた。
全てを知っていた天才は、其の様子をみて、やれやれと笑う。
「え、え、え！？真逆、最初から問題、解いて……！？」
「うむ。世間には良い愚者と悪い愚者がいるが、君は良い愚者だ。実に良い驚き顔をするからな。」
『綾辻先生は扉の近くに隠されていた入力装置に1度近づいた。問題が出題された直後に……その時にでも入力したんだろう？』
彼は嘲笑した顔で頷く。
「ええええ！？え、え、だって暗算は？三千万は！？」
『問題をよく思い出してみてくれ。』
『この星にいる異星人は何人か……答えは1だ。この星から見て異星人は宇宙探検家ガリレオしか居ないからな。』
「ああああー！？」
隣でずっとよく喚ける…、喉が乾かないのだろうか。
「完全数の暗算はコンピューターの方が余程早い。ならば欲しがる智なる者とは、電卓のことか？」
「恐らく出題者の狙いは、極限状態で相手の意図を読む力。第1問は其れを隠す布石。」
「そう予測し、問題の裏を読んだ。」
「それじゃ真逆……回答を済ませた後に、私を嵌めるための小芝居を……」
「嵌める為？違う、屈服させる為だ。────今後の為にな。」
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蒼月(プロフ) - ┏( .-. ┏ ) ┓ｳﾘｬさん» コメントありがとうございます！面白いと言って下さりとても嬉しいです…！モチベが無くなっていた為、とても助かりました。王子さま良いですよね…私もこの本が大好きなんです…！ (9月4日 17時) (
レス) id: 371a01970c (このIDを非表示/違反報告)
┏( .-. ┏ ) ┓ｳﾘｬ - めっちゃ面白いです！！！しかも異能力名が自分もめっちゃ好きな本なので更に興奮(？)しました。有難う御座います！！！ (9月4日 0時) (レス) id: 2c963f022d (このIDを非表示/違反報告)
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