第二十六話 頭痛 ページ28
「顔を近づけるな。先程のものと気体の色が違う。目的も違うものと考えるべきだ。」
「それじゃ、これ、真逆……」
「でも、瓦斯はどんどん出てきています!このままでは床からたまって、いずれ部屋全体に。」
『嗚呼。部屋は密室。瓦斯から逃れるには問題に答えて扉を開くしかない。だが、』
──その瞬間。
ズキリ、と後頭部に突き刺すような痛みがして、表情が歪んだ。
壁を支えにしないと頭が安定しない程には正常を保てない。
綾辻先生と辻村さんが目を見開いたのが見えた。
大丈夫だ、話を続けて呉れ。と会話の催促をする。
「そ、そそそそそれじゃ、早く解いて下さい!綾辻先生とは違って、私達は首に鎖がつけられているせいで、先生の腰くらいまでしか顔が上がらないんです!」
「このままだと、あと数分で致死性の瓦斯を吸い込みます……!Aさんはまだ朦朧としているし…先生、早く解いて下さい!」
「────無理だ。」
綾辻先生のその一言により、え?と辻村さんの声が聞こえる。
「完全数は6,28、その次は確か496。だが流石の俺も、さらに上の完全数を暗記してはいない。」
「残りの二つの完全数は、今、自力で計算するしかない……だが、次の完全数は確か八千程度、その次は三千万程度だったはずだ。」
「さ、三千万!?」
『流石の綾辻先生でも、三千万からの数字の約数を、凡て暗算していく……それもあと数分で。そんなこと、人間に可能だと思うかい?』
電卓を使っても不可能だな、と鼻で笑う。
「え……それじゃ、この状況って……」
綾辻先生は少しの無言の後、ゆっくりと口を開いた。
「────詰みだ。」
「ど……如何にかならないんですか!このままだと三人とも死ぬんじゃ……!」
『三人?二人の間違いだろう。君と私で。』
真顔で訂正すると、え……?と驚かれる。
其れについて、綾辻先生が説明をし始めた。
「考えてもみろ。床から瓦斯を入れるなら、部屋に元々ある空気を出す通気口がもうひとつ必要になる。」
「それが天井の排気口だ。台か椅子を足場にしてそこの空気を吸えば、かなりの時間が稼げる。」
「俺の見立てでは、其れだけの時間があれば計算が間に合う。だが……」
其処まで説明すれば辻村さんも気が付いた。
……そして綾辻先生も同様に何かに気が付いたようだ。
「……そういう事か。」
「え?」
「設計師の意図だ。智なる者とは何か────之が奴の答えだ。」
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蒼月(プロフ) - ┏( .-. ┏ ) ┓ウリャさん» コメントありがとうございます!面白いと言って下さりとても嬉しいです…!モチベが無くなっていた為、とても助かりました。王子さま良いですよね…私もこの本が大好きなんです…! (9月4日 17時) (レス) id: 371a01970c (このIDを非表示/違反報告)
┏( .-. ┏ ) ┓ウリャ - めっちゃ面白いです!!!しかも異能力名が自分もめっちゃ好きな本なので更に興奮(?)しました。有難う御座います!!! (9月4日 0時) (レス) id: 2c963f022d (このIDを非表示/違反報告)
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