第二十話 憂鬱 ページ22
設計師、其れは今政府を脅している──云わばテロリストである。
彼はと或る周波数を発見した。
ほぼすべての建物に共振を起こす……共通の法則を。
此の周波数を外壁から加えると、建材が共振して更に振動が増幅する。
すると、最も弱い部分に応力が集中…その部分が破砕、その後も弱い部分に応力が集中し続けて連鎖的に───建物の凡てが崩壊する。
此の共振装置の部品は安価で手に入る。詰まり、必要なのは知識のみということだ。
此処まで理解出来たら莫迦でも判るだろう?
────設計師はその知識を全世界に公開する、と政府を脅してきた。
全く持って莫迦莫迦しい話だ、そう思って天才は苦笑する。
綾辻先生はこの苦笑の意味が判らなかった。
彼も天才だが、未来を推測する能力は彼女よりも劣っているからだ。
未来を読んだ彼女は、この後の展開が本当に憂鬱なのだろう。
口数がどんどん少なくなっている。
────私達は話を聞いた後、設計師が居るという館へ移動したのだった。
「この中に……テロリストが居るんですね?」
辻村さんがそう問う。
「ま、居らずとも実害はない。儂等が骨折り損の道化者になるだけよ。」
『…だが、奴は居る筈だ。でなくては私達“智なる者”を招いた意味がないからな。』
「智なる者?」
谷崎君はもう一度言葉を繰り返し、其の言葉の意味を理解しようとした。
「然り。其れが儂等が此処に居る理由じゃ。」
「奴は以前より、異様に“智なる者”との接触を渇望しておった──即ち、己より賢い者じゃ。」
「俺の所にも情報だけは来ていました。尤も接触計画は特務課上層部に握り潰されましたが。」
『当たり前だろうな。でなければ此方の危機になってしまう可能性がある……中々、綾辻先生が捕縛や利用されるような玉では無いというのは百も承知だが。』
そう言って溜息を吐く。
「そういう事もあり、儂は綾辻君の代用品を立てざるを得なくなった。」
「それでボクに代用品として綾辻さんの姿を模倣してほしい、という依頼が来た訳ですね……」
──天才である彼女は厭な予感がする…と次に来る台詞に備える。
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蒼月(プロフ) - ┏( .-. ┏ ) ┓ウリャさん» コメントありがとうございます!面白いと言って下さりとても嬉しいです…!モチベが無くなっていた為、とても助かりました。王子さま良いですよね…私もこの本が大好きなんです…! (9月4日 17時) (レス) id: 371a01970c (このIDを非表示/違反報告)
┏( .-. ┏ ) ┓ウリャ - めっちゃ面白いです!!!しかも異能力名が自分もめっちゃ好きな本なので更に興奮(?)しました。有難う御座います!!! (9月4日 0時) (レス) id: 2c963f022d (このIDを非表示/違反報告)
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