第一話 未来 ページ3
きっと、太宰は人助けをする場所を求めて種田長官に会いに行くだろう。
紹介される場所は武装探偵社──。
『久し振りに福沢諭吉さんと江戸川乱歩さんに会いに行きたかったが、私にあった場所はあそこでは無い筈だ。』
彼女の口が弧を描く。
ゆっくりと歩を進め、とある建物の前で止まる。
─────内務省異能特務課。
堂々と彼女は歩く、元ポートマフィアとはいえど抜けたことは政府どころか、ポートマフィアにも知られていないはずだ。
だが、今は騒ぎも何もなく、人と空気のようにすれ違う。
誰も存在に気付いていないのだ──。
彼女の目的はたった一つ。
『やぁ、安吾。』
「────Aさん…?」
彼、坂口安吾に会うためだった。
彼は金魚のように口をパクパクさせ、言葉が出ないらしい。
『此処の警備は手薄だねぇ…、相変わらず元気かい?』
「…手薄だといえるのは天才である、貴女だけですよ。」
それもそうか、と彼女は笑う。
「何しに此処まで来たんですか?…ポートマフィアの首領補佐であるAAさん。」
警戒するような険しい目で見つめてくる坂口安吾に反し、彼女は微笑が口角に浮かぶ。
『そんなに警戒しないでくれ給え、私が此処に来たのは他でもない。
────ポートマフィアを抜けてきた、今までの経歴を消して欲しくてね。』
彼の目はまた見開いた。
『太宰も織田作に影響され私と共に抜けたんだが、如何せん君が知っているように、私は太宰が苦手でな。』
「…成程。」
そう言って一息つくと、また言葉を綴った。
「貴方は殆ど自分の手を汚さず、書類仕事を主にやってきた為、経歴を消すのは簡単です。」
「ですが、この後はどうするんです?あなたが考え無しに行動に移るとは僕には到底思えません。」
私のことがよく分かっているじゃないか、と満足そうな笑みを浮かべると、真剣な眼差しで彼に向かって言った
『私を特一級異能力者とし、四年程保護してほしい』
「はい?」
一体何度人を驚かせれば気が済むのか、彼女の思考は誰にも分からない。
『会いたい探偵がいる、その時はその人と行動を共にしたくてね。』
どこまで未来を読んでいるのかと頭を悩ませている坂口安吾を見て、また口元が綻ぶ。
―────彼女の思考は、彼女と神のみぞ知るのだろう。
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蒼月(プロフ) - ┏( .-. ┏ ) ┓ウリャさん» コメントありがとうございます!面白いと言って下さりとても嬉しいです…!モチベが無くなっていた為、とても助かりました。王子さま良いですよね…私もこの本が大好きなんです…! (9月4日 17時) (レス) id: 371a01970c (このIDを非表示/違反報告)
┏( .-. ┏ ) ┓ウリャ - めっちゃ面白いです!!!しかも異能力名が自分もめっちゃ好きな本なので更に興奮(?)しました。有難う御座います!!! (9月4日 0時) (レス) id: 2c963f022d (このIDを非表示/違反報告)
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