第十八話 初対面 ページ20
「ありがとうございます、Aさん、綾辻先生。」
ここからは私が、と云って辻村さんは銃を構えた。
「依頼人の名を云いなさい。」
「綾辻先生は国家の重要管理物。姿だけとはいえ、盗めば国家の安全保障に関わります。」
「もはや道は無い、吐け。……それにおそらく、彼女の心配は杞憂に終わる。───君の行為は犯罪ではない。だろう?」
綾辻先生がそう言葉を綴ると、谷崎潤一郎君は語り出す。
どうやら、京極夏彦という依頼人により命じられたということが分かる。
微かにだが、綾辻先生の表情が曇った。
『京極夏彦、ね…。』
「……知っているのか?」
綾辻先生が私にそう尋ねる。
『……さぁ、どうだったかな。』
そっぽを向いて谷崎潤一郎君を見ると、依頼人の待ち合わせについて話しているところだった。
「…そこへ向かうぞ。」
その綾辻先生の言葉により、私たちはそこへ向かう事になる。
実につまらない。
─────未来を知っている天才にとってそれは憂鬱だったのだ。
歩いて暫くすると、森の中にある館の前に着く。
「ここが依頼人との待ち合わせ場所です。」
綾辻先生はどことなく硬い表情をしており、先程から黙っている。
それもその筈、綾辻先生が京極夏彦に会うのは蘇芳堂事件以来。
その事件は江戸川乱歩さんが中学生の時には既に過去の話になっている……つまり、綾辻先生が中学生以下、其の頃から探偵をやっていたと考えると実に末恐ろしい。
「車が来ました。」
車はあたしたちの目の前で止まり、中から人が降りて来た。
正真正銘、京極夏彦だ────。
彼はずっと綾辻行人と見つめ合っている。
無言の間が続くと、お互いに「くくく……」と笑い始めた。
「くくく……あっはっはっは!迷惑掛けたのう綾辻君!」
京極夏彦が喋り始める。
「ご無沙汰しています。京極先生。」
綾辻先生もそう返すと、辻村さんは「……あれ?」となんとも拍子抜けた声を出す。
社交辞令中の社交辞令、なんとも其のお手本のような会話を2人が繰り広げていると、「お2人は、お知り合いだったんですか!?」と谷崎潤一郎君が驚いたが、
「うわっびっくりした。」
───更にその声により辻村さんが驚いた。
「済まぬのう。故あって、君には明かせなんだのじゃ。」
何故こんな依頼をしたのか、京極夏彦さんは説明をし始める。
────いや、説明しようとした。
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蒼月(プロフ) - ┏( .-. ┏ ) ┓ウリャさん» コメントありがとうございます!面白いと言って下さりとても嬉しいです…!モチベが無くなっていた為、とても助かりました。王子さま良いですよね…私もこの本が大好きなんです…! (9月4日 17時) (レス) id: 371a01970c (このIDを非表示/違反報告)
┏( .-. ┏ ) ┓ウリャ - めっちゃ面白いです!!!しかも異能力名が自分もめっちゃ好きな本なので更に興奮(?)しました。有難う御座います!!! (9月4日 0時) (レス) id: 2c963f022d (このIDを非表示/違反報告)
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