第十七話 青年 ページ19
「…心配せずとも約束の二年後────君を殺す。」
その瞳はしっかりとAさんを捉えていた。
『其れは重畳。二年も一緒に居て、親近感を覚え殺せなくなった…となると困るからな。』
この悪魔の契約の様な話を坂口先輩から事前に聞いていたけれど…、───はっきり言って異質だというのは見て取れる。
容疑者であるあの人もポカンと口を開き、この状況に着いて来れていなかった。
私も坂口先輩から状況を聞かされていなかったら、あんな顔だったかもしれない…
《生きる意味が無い、きっと彼女はそう思っています。》
生きる意味が無い、其れだけの理由で彼女は死にたいのだろうか、それ以外の理由もありそうだけど…。
之は女の勘というのでしょうか。
先程のAさんの顔は、何やら悲しげで…淋しいような雰囲気があったような気がするんです。
と云っても、確証は無いんですけどね!
『そう云えば、何故綾辻先生も谷崎潤一郎君を見抜くことが出来たのか話していなかった。』
「た、確かに!どうしてわかったんです?」
『三日前、綾辻先生は資料を取り寄せた。それは異能特務課の視覚操作系異能のリスト。』
「…三日前?でも彼が来たのは今日で……」
まさかとは思い、脳裏に過ぎった考えを口に出す。
「つまり……先生は彼の侵入を読んでいた……?」
「当然だろう。でなくては姿を消す異能者を捕らえられるものか。」
先生はそう言うと、直ぐに青年は声を上げる。
「待って下さい、バレてた?不可能です!依頼の守秘は完璧の筈……!」
「真実を守る殻は薄く脆い。特に俺の前ではな。」
「…彼は何の目的でここに侵入したんです?」
『盗み、黒幕に命じられてね。』
「違う!」
青年は声を荒げた。
『嗚呼、失敬。君たちにとっては黒幕ではなく依頼人だったか。』
「どちらも大して変わらんだろう。」
ここで一つ疑問が浮かぶ。
「盗みって……でも何も盗まれてなかったんじゃ…」
「いいや。既に盗みは完了し、彼は帰るところだった。」
「こいつが盗んだのは、この建物で最も価値があるもの。つまり────俺だ。」
「ど、どういうことです?」
『谷崎潤一郎君の異能は本命がある、一つ何かやってみ給え。』
青年は無言で、その姿をゆっくりと変えた。
「姿が……綾辻先生に!?」
『依頼人は綾辻先生の幻像が欲しかったんだ、本物は監視されて自由に行動できないからな。』
────彼女は溜息を一つ吐いた。
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蒼月(プロフ) - ┏( .-. ┏ ) ┓ウリャさん» コメントありがとうございます!面白いと言って下さりとても嬉しいです…!モチベが無くなっていた為、とても助かりました。王子さま良いですよね…私もこの本が大好きなんです…! (9月4日 17時) (レス) id: 371a01970c (このIDを非表示/違反報告)
┏( .-. ┏ ) ┓ウリャ - めっちゃ面白いです!!!しかも異能力名が自分もめっちゃ好きな本なので更に興奮(?)しました。有難う御座います!!! (9月4日 0時) (レス) id: 2c963f022d (このIDを非表示/違反報告)
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