第十五話 莫迦 ページ17
「んなっ……酷い!」
『酷いだけじゃ済まないだろう、普通は。』
口論を続けているのが聞こえるが、正直興味が無い。
部屋の隅に避難している三毛猫を撫で、耳だけを傾ける。
少しすると、結論が決まったらしい。
5分以内に、青年の正体と目的を見破れ、それが出来たら君を新たな監督者と認める。
出来なければ、7時間以内に転属届を出せ。
纏めてしまえばこう決まったらしい…彼女は容疑者に尋問を始めた。
「A君。君はどうなると思う?」
突然、此方に話が振られるが、猫を撫で続けそっぽを向いたまま話す。
『彼女はこの試験を合格できない、だが、今後も転属届を出すことはなく君の傍にいる。』
「……何?」
思っていたような結末では無かったのだろう。
『天才がこの推理を外すことは無い、君もこの二年間で分かっただろう?』
「……そうだな。」
因みに、この二年間、異能力を余り使わなかった。訳は使う理由が無かったからだ。
その為、綾辻行人は未だに私の異能について知らない。
綾辻先生は無言で、尋問を始めている辻村さんの処へ歩いた。
『天才は外さないんだよ…綾辻先生。』
もう一度繰り返した少女は何処か悲しげに笑った。
その声は撫でている三毛猫にしか届かない。
「綾辻先生、彼は犯罪者じゃないようです!」
……どんな頓珍漢な推理をして其の答えに辿り着いたのか。
溜息を吐いて、彼女も会話へ加わる。
『「君は死んで阿保を治せ/治した方が良い。」』
二つの声が重なった。
『ただの雑貨屋が高価なアンティーク家具に釣られ不法侵入……此処が何処か理解してないのか?』
『この建物を取り囲んでいる狙撃班に気付かれずに入れる“ただの雑貨屋”が何処にいる。』
「あっ。」
と彼女は声を漏らした。実に莫迦莫迦しい。
「だが一方で、この雑貨屋の身分証は完璧だ。住所も実物。名前も戸籍登録があった。これは何を意味する?」
「えっと…それは……」
彼女は俯き、悩んでいる様子だ。
「却説、あと2分だ。君の経歴に大きな傷がつくまでに。」
「ぐぬぬ……。」
「あの……解放してくれたら、初回に割引のクーポンを差し上げ……」
谷垣理一郎と名乗る青年が喋りだすが、綾辻先生がそれを制止する。
「黙れ、炙るぞ。」
「黙ります。」
即答だった。
「そろそろ時間切れだ。」
「え?もう!?あと2時間くらいありませんでしたっけ!?」
『どれだけ自分に甘いんだ君は…。』
──天才は頭を抱える。
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蒼月(プロフ) - ┏( .-. ┏ ) ┓ウリャさん» コメントありがとうございます!面白いと言って下さりとても嬉しいです…!モチベが無くなっていた為、とても助かりました。王子さま良いですよね…私もこの本が大好きなんです…! (9月4日 17時) (レス) id: 371a01970c (このIDを非表示/違反報告)
┏( .-. ┏ ) ┓ウリャ - めっちゃ面白いです!!!しかも異能力名が自分もめっちゃ好きな本なので更に興奮(?)しました。有難う御座います!!! (9月4日 0時) (レス) id: 2c963f022d (このIDを非表示/違反報告)
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