第十四話 転属願 ページ16
「あのう……」
「その、猿轡を外してやらないと、自白できないのでは……」
「?何故だ」
綾辻先生は問う。
「いや、なんかその人、さっきから何か喋りたそうにしてますし……」
「君は莫迦か?そんなことをして、もしこいつが自白したらどうする。楽しみが減るだろうが」
「ええ……?」
困惑しているのが分かりやすい。思っていることがすべて顔に出るというのは、出会った当初でも判るだろう。
『…困惑するのは分かるが、慣れるしかない…精々頑張るんだな。』
「Aさん…。」
懇願をするような目で此方を見てくるが、私は君を扶けることが出来ない。
其れに、ずっと居たら厭でも慣れる筈だ。
そのまま五分ほど隅で黙っていた彼女だったが、何やら動きそうな気配を感じる。
「綾辻先生!」
ほら来た。
「断る。」
発言はその一言で一刀両断された。
やはり彼女には少し同情をする。
「あの、私、まだ何も云っていませんが。」
「俺の尋問に口出ししようとした。」
そうですが…と言葉を続ける辻村さんに向けて、また言葉を綴る。
「しかも目的は、新任のエージェントとして舐められたくないから、だ。違うか?」
どうして、と彼女は尋ねる、なんて正直なんだろう。
そう思いながら茶髪の青年を見つめる。何度も死にかけては回復されているからだろうか、未だに諦めていない表情をしている。
「やれやれ。部屋の愚か者人口密度が一人増えた訳か。」
『其れに私は含まれていない事を信じるよ。』
そうジト目で追及するが、さあ、如何だかな。と躱されてしまった。
「推理をする迄も無い、君の場合、表情に全部書いてある。」
「ウッソだあ!そんなの有り得ませんよ!」
────沈黙が訪れた。
なんて彼女はお気楽なんだろうか、私と綾辻先生はそう呆れる。
「……えっ?何?本当に?」
『…頭が痛くなってくる。』
「同感だな。担当官が新人と聞いた時から厭な予感はしていたが。」
「やはり今日は、最悪の日だ。」
綾辻先生はそう言って眉間に皺を寄せた。彼女は疑問に思ったようだが、何でもない。ところで、と話が変わる。
「1から10まで好きな数字を云ってみろ。」
…彼女の答えた数字は7だ。
「では今から7時間以内に、君に自主的に転属願を出させてみせると誓おう。」
「その為なら、脅迫、密告、情報操作……手段を択ばず、全力を尽くすとここに宣言をする」
『ひゅう、実に陰湿だねぇ』
────冷徹な視線が刺さった。
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蒼月(プロフ) - ┏( .-. ┏ ) ┓ウリャさん» コメントありがとうございます!面白いと言って下さりとても嬉しいです…!モチベが無くなっていた為、とても助かりました。王子さま良いですよね…私もこの本が大好きなんです…! (9月4日 17時) (レス) id: 371a01970c (このIDを非表示/違反報告)
┏( .-. ┏ ) ┓ウリャ - めっちゃ面白いです!!!しかも異能力名が自分もめっちゃ好きな本なので更に興奮(?)しました。有難う御座います!!! (9月4日 0時) (レス) id: 2c963f022d (このIDを非表示/違反報告)
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