第十三話 拷問 ページ15
「さあ青年、君に質問だ。弱火、中火、強火。一番好きなのは?」
「んぐ、むぐ!」
「そうか。強火か。ではリクエストにお応えしよう。」
淡々と質疑応答が一方的に行われている。
その傍らで、未だに状況が理解できていない辻村さんは大人しく待って考えている。
『…じゃあ薪の種類は如何しようか?煙の少ない炭火か、煙の多い生木か、死ぬほど煙る松の木か。』
綾辻先生に反し、猫のような狡猾な薄笑いで尋ねる。
「んぐむむ!」
「ほう。松の木か。呼吸が出来ない程の煙が好みなわけだな。」
では仰せの通りに、と言いながら彼は松の木を足していく。
正直、之が生きてきた中で一番楽しいと言っても過言では無い。
「むぐぁ、ごほ!ごほっ!」
『次は距離だ。遠くから燻されるのがいいか、火が頭を焦がすほどの至近距離か。』
『嗚呼、聞く迄も無かったな。存分に焦がされてくれ給え!』
間髪を入れずにそう言うと「むぐー!」と聞こえるが、うむ、実に良い反応だ、と満足していると
「ちょっちょっ、ちょっと待って下さい!」
───辻村さんが言葉を発した。
「何だ。」
「何をしてるんです!その人死にますよ!」
「っていうかここ室内ですよね!?」
「遠くから軽く暖めたくらいで、この容疑者が吐くと思うか?」
そう言って綾辻先生は溜息を吐く
「いやそういう事では……、え、容疑者?」
『気づくのが遅い。』
「彼は先程、ここに不法侵入した。それをA君が捕まえた。」
「侵入って……この事務所に、ですか!?」
やっと気づいたらしいが、この綾辻探偵事務所は政府が管理する重要施設。
其処で不法侵入者が現れて警報のひとつ鳴らなかった。
──特務課の責任問題となるのは目に見える。
「漸く事態の重さが理解できたか。判ったら部屋の隅で大人しく座っていろ」
「え、あっ、はい」
返事をする辻村さんを見て其の素直さで大丈夫なのだろうか、と疑問に思う。
それが彼女の魅力とも言えるだろうが。
「却説……人は逆さ吊りにされると、心臓による循環機能が不全を起こして数時間で死ぬそうだ。」
「また煙と一酸化炭素に曝されれば呼吸が阻害され、濃度にもよるが数十分から数時間で死ぬとされる。」
淡々と今の状況を容疑者に説明をするが、最後に氷のような嘲笑が唇を掠めた────絵に描いたように、愉しそうで悪い顔だ。
「実際はどちらが先なのか、試させてくれ。」
「んぐ!んむぐー!」と抵抗する声が聞こえた。
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蒼月(プロフ) - ┏( .-. ┏ ) ┓ウリャさん» コメントありがとうございます!面白いと言って下さりとても嬉しいです…!モチベが無くなっていた為、とても助かりました。王子さま良いですよね…私もこの本が大好きなんです…! (9月4日 17時) (レス) id: 371a01970c (このIDを非表示/違反報告)
┏( .-. ┏ ) ┓ウリャ - めっちゃ面白いです!!!しかも異能力名が自分もめっちゃ好きな本なので更に興奮(?)しました。有難う御座います!!! (9月4日 0時) (レス) id: 2c963f022d (このIDを非表示/違反報告)
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