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「で、あの女、どうする?」
「______え?」
「さっきのやつ」

ふいに玲王に冷ややかな声で問われて、Aは目を丸くして彼を見上げた。

「なに言ってんの?らしくないよ、玲王」
「そうか?」
「うん……それに、怖いよ、顔」

普段から柔らかな表情をしている玲王とはかけ離れ、仄暗く陰鬱な瞳の中に鬼を飼っているような相が浮かんでいる。それはまだ誰もが見ことのない、決して公には見せてはならないような玲王の姿である気がして、心の表面が粟立った。

「玲王……?」
「ん?どうした?」

どこか虚空を見詰める玲王に恐る恐る声をかけると、ようやく我に返ったのか、普段と同じ表情をした彼の口元に微笑が浮かび、思わず安堵した。

「いや、なんていうか、私は別に大丈夫だから!何か報復しようとか、それこそ、前みたいに皆の前で女の子論破したりしないでね?」
「お前さぁ、それ泣くやつが言うセリフか?」
「ぐっ……それはごもっともなんだけど」

玲王が一言声をかければ、女子生徒はほとんどそれに従うだろう。玲王は人に好かれる能力だけでなく、影響力もある人だった。

だからこそ、自分で何も出来ない無力さを一層痛感して、その度に悔しくなって、何でも出来てしまう玲王に妬いてばかりいる。Aにも優しく接してくれる玲王にそのような感情ばかりを抱いてしまう自分は、情けなくて卑屈な人間だ。そんなAが彼の友人として隣に立つことは、恥ずかしいことだと思った。彼の幼馴染として隣に居るためにも、自分自身を早く変えたいと常々思っていた。

「でも、私はやっぱり自分の力でどうにかしたい。だから、お願い!玲王は何もしないで!」

両手を合わせて縋るように言うと、しばらくして、玲王の諦めたような溜息が落ちてきた。

「ったく、頑固だなお前は……」
「……分かってくれる?」
「ああ。でも、辛かったら早く言えよ?俺は何を捨てても優先して、Aの味方になってやるから」

______何を捨てても。その言葉を聞けるだけで嬉しかった。まるで、今だけは皆の玲王が自分だけのものになったような気がした。しかし、それは恋でも愛でもない。ただ単に、母親を妹に奪われた姉のような、そんな小さな独占欲なのだとはっきりと自覚している。

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設定タグ:ブルーロック , 御影玲王 , ヤンデレ   
作品ジャンル:アニメ
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黄泉(プロフ) - 七星さん» はじめまして、コメントありがとうございます!またこのお話をお読みくださり、面白いとのお言葉までありがとうございました!🥳 わっかります、むしろ、彼にならどんな手を使っても奪われたいくらいですよね笑 どこかでご縁がありましたら、またお願いします! (2023年2月7日 23時) (レス) id: ead223a600 (このIDを非表示/違反報告)
七星 - とっても面白くて、一気に読んじゃいました.ᐟどんな手を使ってでも玲王くんなら許しちゃうかもです(笑) (2023年2月7日 22時) (レス) @page34 id: 0897eb2537 (このIDを非表示/違反報告)
黄泉(プロフ) - 真昼さん» はじめまして、コメントありがとうございます🙇‍♀️続きが楽しみだと言って頂けてとても嬉しいです!あと少しで完結になると思いますので、どうぞもうしばらくお付き合いの程よろしくお願いしますm(__)m (2023年2月4日 11時) (レス) id: fe076a4b2d (このIDを非表示/違反報告)
真昼 - 続きが楽しみです! (2023年2月4日 10時) (レス) @page19 id: 94c427d0c3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:黄泉 | 作成日時:2023年1月28日 10時

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