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「うん、もちろん。むしろありがとう」
「じゃあ、えーと……早速行こうか」
喜色を隠せないほどの笑みを頬に浮かべて、菱田はスマートフォンを片手に半歩前に出た。
その際チラッと見えてしまったのだが、開かれたネットのタブには「デートスポット、女子が好きな店」等というような検索履歴が残っており、Aは密かに微笑を溢すのだった。
それから二人は、隠れ古民家のようなカフェでお茶をした後、カップルばかりの公園を歩いて、それから都会の夜景を見下ろせる高層階のレストランで食事をした。それは、まさに社会人の絵に描いたようなデートであった。だが、不思議とそれを楽しんでいる自分がいる。
高校生という年齢であると、身体を繋げることだけを目的としている人がAの周りには多かったけれど違った。
菱田は、程良い距離を保ちながら純粋に男女のデートというものを教えてくれる。このようなデートは初めてだったこともあり、どこか新鮮な気持ちで楽しんでいるAが菱田の目にも目新しいように感じたのかもしれない。菱田に家の近くまで送ってもらった後、「また会えたりしないかな」と問われて、気づけば頷いていた。
互いに少し口下手ではあるけれど、それが二人にとって心地良かったのかもしれない。実際にAは、沈黙が続く時間があっても決して嫌気がさすことはなかったのだ。
静寂の闇に包まれた後、Aはこれが現実なのだろうかと不思議に思った。玲王が自分の世界の中心だったあの頃のAは、玲王がいなければ何も出来ず、根暗で行動力もないただの女だった。玲王の傍で甘やかされているだけの、我儘なお嬢様も同然である。しかし、菱田との出会いは、Aのそんな無価値な存在を否定してくれた。
(私、この人となら、やっていけそう______)
そんな確信を持ちながら、菱田と別れようとしたその時、一つの影がゆっくりと近づいてきて目を向けた。
「楽しそうだな、A」
いきなり玲王の声がして、Aも菱田も耳を疑った。まさか、彼がAの家の前にいるだなんて誰もが思わないだろう。
どくん、どくん、と脈を打つのが速くなる。
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黄泉(プロフ) - 七星さん» はじめまして、コメントありがとうございます!またこのお話をお読みくださり、面白いとのお言葉までありがとうございました!🥳 わっかります、むしろ、彼にならどんな手を使っても奪われたいくらいですよね笑 どこかでご縁がありましたら、またお願いします! (2023年2月7日 23時) (レス) id: ead223a600 (このIDを非表示/違反報告)
七星 - とっても面白くて、一気に読んじゃいました.ᐟどんな手を使ってでも玲王くんなら許しちゃうかもです(笑) (2023年2月7日 22時) (レス) @page34 id: 0897eb2537 (このIDを非表示/違反報告)
黄泉(プロフ) - 真昼さん» はじめまして、コメントありがとうございます🙇♀️続きが楽しみだと言って頂けてとても嬉しいです!あと少しで完結になると思いますので、どうぞもうしばらくお付き合いの程よろしくお願いしますm(__)m (2023年2月4日 11時) (レス) id: fe076a4b2d (このIDを非表示/違反報告)
真昼 - 続きが楽しみです! (2023年2月4日 10時) (レス) @page19 id: 94c427d0c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黄泉 | 作成日時:2023年1月28日 10時