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「私も、これで終わらせたくない、」
「……クソ可愛い」
私が矢継ぎ早に「でも!」と言いかけた言葉ごと、ミヒャエルが飲み込むようにして唇を塞いだ。
私は驚いて反射的に拒絶を露わにしようとしたけれど、ミヒャエルは抵抗することを許してくれなかった。
そこで私は、初めから自分に拒否権はなかったことに気づく。昨晩から感じていたが、ミヒャエルは少し、いやかなり横暴な人だった。私はその種の男性に弱い。意志薄弱なこともあり、迫られると反射的に何もかも受け入れてしまうのだ。
「お前は本当に危なっかしい女だな。俺じゃなくても、誰彼構わず後に着いていくつもりだっただろ」
否定をしたかったけれど、ミヒャエルの言う通りだった。私はもし、相手がミヒャエルじゃなくてもきっと身体を許してしまっていたに違いない。そう確信があった。
「俺が紳士で良かったな?」
「紳士だなんて……ミヒャエルは強引過ぎるわ」
「そうか?俺は狙った子猫はどうしても捕まえないと気が済まないんだ」
恥ずかしげもなく歯が浮くような気障な言葉を吐き出すのは、外国人特有のものなのだろうか。
以前付き合っていた人は愛情表現も性行為に関しても淡白であったためか、ミヒャエルのような人に対しての耐性が私にはないらしい。言葉一つ一つに限らず、指先の細やかな仕種でさえ意識してしまい、軽く受け流すことが出来ず顔に熱が集中するのを覚えた。
「日本人はシャイだと聞いたが、本当らしいな」
「……面倒くさい、って思うでしょ?」
「いや?逆に素直にさせてやりたくなる」
あまりにもポジティブというか、楽観的というか、ミヒャエルのその言葉を聞いて私は思わず小さく笑ってしまった。
ミヒャエルはそんな私の顔を見て驚いたような顔をしている。私はそこで、ハッとした。
そういえば、昨日から、いや、思い返せば、もう何年も笑うことが出来ていなかったような気がするのだ。
「……ミヒャエル、やっぱり私も、元カレには感謝しているわ」
「急に何の話だ」
「だって、そのおかげであなたに会えたんだもの」
だから、この傷が完全に癒えて心の底から笑えるようになるまでは、ミヒャエル・カイザーという男に着飾られるくらいの良い女として、この温もりに身を委ねることを許して欲しかった。
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玉子ぷりん - 見てて「こういうのもいいな」と新しい扉がひらいた気がします!(?)完結おつかれさまです!これからもおうえんしてます! (2023年4月3日 22時) (レス) @page23 id: 07e67c9327 (このIDを非表示/違反報告)
黄泉(プロフ) - ひてゃんさん» はじめまして、コメントありがとうございます!また、このお話を最後までお読みくださりありがとうございました!ひてゃんさんに、そのように言って頂けてとても嬉しいです🍀またご縁がありましたら、その時はよろしくお願いします🙇♂️ (2023年3月5日 0時) (レス) id: ead223a600 (このIDを非表示/違反報告)
ひてゃん(プロフ) - とてもおもしろかったです!!完結お疲れ様でした👏🏻❤️🔥 (2023年3月4日 12時) (レス) @page23 id: beb1a37d1b (このIDを非表示/違反報告)
黄泉(プロフ) - 悠さん» 悠さん、改めまして最後までお読みくださりありがとうございました!また、再びコメント頂けて嬉しいです🥰彼に人生狂わされたくて思いついた話なので、そのお言葉とっても胸に響きます😊今後ともご縁がありましたらよろしくお願いします🙏 (2023年3月4日 7時) (レス) id: ead223a600 (このIDを非表示/違反報告)
悠 - 自分はウェブで見てるのでフォローとかができないんですけどツイッターも見てます! 改めてお疲れ様でした! (2023年3月3日 23時) (レス) @page23 id: 1f3484379a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黄泉 | 作成日時:2023年2月11日 16時