エピローグ ページ20
＊
あれから数ヶ月が経つ頃、私の傷は完全にとは言えないが、癒え始めていた。
男に縋り付けば不幸の連鎖になる、という己の体験から得た教訓を活かして、私はバイトに没頭し遊ぶのは女友達のみという生活を送っていた。最初こそ意気消沈していたものの案外時間が過ぎれば解決することもあるのだな、と最近の私はそんなことを考えるようになっている。結果としては何の柵もない今の人生は私には水を得た魚で合っていたのか、友達にも「最近なんかノリ良くない？」とまで言われるようになったほどだ。
そんな日々が過ぎていったある日のこと。講義終わりにバイト先に向かおうとしていると、何やら大学の前が騒がしくて足止めを食らった。
何かの撮影だろうか。人集りが出来ていて帰宅するにも横道を通るのも一苦労なほどだった。なんとか群がる人の間を分け入って進み、ようやく外に出れたというところでふいに名前を呼ばれたような気がした。
振り返って見ると、輪の中心から背丈の高く一際派手な黄金色の髪を靡かせ、薔薇の花束を持った男が驕慢な態度でこちらに向かって歩いてくる。その目は間違いなく私を捉えており、気づけば反射的に逃げ出していた。
(な、なんでいるの……？！)
同じ大学の学生だけでなく周囲の通行人まで巻き込んで輪を作っていた存在は、紛れもなくミヒャエルだった。久方ぶりに見た彼の姿は酷く懐かしくて、それだけで忘れかけていた恋情が込み上げてくる。まさか彼が大学に居るとも思わなくて、夢の中にいるのではないかと錯覚しそうになった。夢にしてはやけに充足感のある一日でもあったため、これが夢ではないと自覚しているが、夢であって欲しいとも思わずにはいられない。
確かに彼は目を瞠る程美しい容姿をしているが、それだけでこんなにも人が集まるものなのだろうか。不思議に思いながら逃げるように来た道を引き返していると、女子生徒の声がすれ違う際に耳に入ってくる。
「ミヒャエルカイザーよね？ホンモノなの？」
「ホンモノよ！だって、私何回もBLTBで見たもん！」
ひそひそと呟かれた名前は忘れるはずもない、夢のような夜を何度も過ごしてきた彼のものであった。
BLTB。友人から以前聞いたことのある名だった。確か、潔くんの話をした時に知った、サッカーのリアルタイム中継だったような気がする。潔くんとミヒャエルに接点があった所以は、そこにあったというのだろうか。
まさか、ミヒャエルがそれほど有名な人だったのかとも知らなかったが、確かに彼の容姿を持ってして、ただの一般人ならば宝の持ち腐れもいいところだと納得もした。
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玉子ぷりん - 見てて「こういうのもいいな」と新しい扉がひらいた気がします！（？）完結おつかれさまです！これからもおうえんしてます！ (2023年4月3日 22時) (
レス) @page23 id: 07e67c9327 (このIDを非表示/違反報告)
黄泉(プロフ) - ひてゃんさん» はじめまして、コメントありがとうございます！また、このお話を最後までお読みくださりありがとうございました！ひてゃんさんに、そのように言って頂けてとても嬉しいです🍀またご縁がありましたら、その時はよろしくお願いします🙇♂️ (2023年3月5日 0時) (レス) id: ead223a600 (このIDを非表示/違反報告)
ひてゃん(プロフ) - とてもおもしろかったです！！完結お疲れ様でした👏🏻❤️🔥 (2023年3月4日 12時) (レス) @page23 id: beb1a37d1b (このIDを非表示/違反報告)
黄泉(プロフ) - 悠さん» 悠さん、改めまして最後までお読みくださりありがとうございました！また、再びコメント頂けて嬉しいです🥰彼に人生狂わされたくて思いついた話なので、そのお言葉とっても胸に響きます😊今後ともご縁がありましたらよろしくお願いします🙏 (2023年3月4日 7時) (レス) id: ead223a600 (このIDを非表示/違反報告)
悠 - 自分はウェブで見てるのでフォローとかができないんですけどツイッターも見てます！ 改めてお疲れ様でした！ (2023年3月3日 23時) (レス) @page23 id: 1f3484379a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：黄泉
| 作成日時：2023年2月11日 16時
