ねぇ、こっち向いてよ (ページ13)

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１２. ページ13

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タクシーの中は、思っていた以上に距離が近くて緊張する

一緒に帰ろうとは言ったものの、何を話せばいいのか分からず、沈黙が流れる

……僕の悪いとこ、だ。

僕は元々口数が多いタイプではないし、こういう空気も全然大丈夫な人だけど、気まずいって感じる人が多いだろう

きっと陣さんとかだったら相手に気まずさを感じさせないくらい話せるんだろうな

そんな沈黙を破ったのは隣に座るこの人で

『長谷川さん、意外ですよね』

「何がですか？」

『いや、話しかけてくださったのとか意外だなって』

「え？」

『前のご飯会、あまり話していないイメージだったので』

「めちゃくちゃ人見知りなんで笑」

『私もです』

「まじっすか？意外…」

常に誰かと話しているイメージだったけど、そう言われてみれば " 話しかけられている " っていうニュアンスが強いのかもしれない

『なんか、心地いいです笑』

お互い窓の外を見ているから、相手の顔なんて、表情なんて見えないけど

ただ………嬉しい。

こういう空気を気まずいとかじゃなくて、心地いいって思っていてくれたことが、素直に嬉しかった

「おやすみなさい、Aさん」

Aさんがタクシーを降りる時、そう言うと、またふわっと笑った

名前を呼んだのは、この時が初めてだった

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