天使の彷徨【剣城京介】 ページ12
きつい練習を終えたばかりの体に、重い鞄がずしりとのし掛かる。
京介は、もう暗くなってきた土手の上を小走りで進んでいた。走りにくいので鞄は手に持たず抱えて、息を切らしながら、夢中に重い足を動かした。
急がなければ、兄の面会時間に間に合わなくなってしまう。
疲れた足の裏は擦れて熱くなり、アスファルトの継ぎ目を踏む度に熱線で焼かれたように痛む。京介の顔にはまだ泥がついていたが、京介は気付いていなかった。
京介の兄は、幼い頃に下半身の自由を失ってしまった。
辛うじて手術によって歩けるようになる可能性が残っているが、その手術には莫大な金がかかる。京介の両親は、京介の学費で手一杯だった。
だから京介は、フィフスセクターでシードになる道を選んだ。働きに応じて手術費を賄ってもらえるからだ。京介にとって他人からサッカーを奪うことはとても辛く、その痛みは計り知れなかったが、それでも魔の使いであり続けた。
その後雷門に配属されてからは、兄の病院が近くなった。
京介はいつも面会時間ギリギリだとしても、毎日欠かさず兄に会いに行った。
兄は、京介がサッカーを大好きなことが何より嬉しく思っており、泥だらけの京介を見るたびに幸せそうに笑うのだ。京介はその笑顔が大好きだ。
たとえ自分はサッカーが出来なくとも、京介がサッカーをしていることを僻みひとつなく喜んでくれる兄の心を、京介は美しいと思う。兄にはいつも敵わない。
でも、そんな兄が、自分のしていることを知ったらどう思うだろう？
京介は兄にフィフスセクターでの悪事を隠していた。たとえ自分の意志ではなくとも、他人から喜びを、希望を、夢を、奪っていることは間違いないのだ。
それを知ったら兄さんはなんと言うだろうか。
優しい兄は、自分を許すかもしれない。あるいは見たことのない剣幕で怒るかもしれない。どちらであってもそれが兄の揺るぎない優しさから来るものであることがわかっているから、京介はますます本当のことが言えなくなるのだった。
兄の病室の前で、ドアノブに手をかける前に、小さく息をついた。
「兄さん、はいるよ」
今日も今日とて、複雑な気持ちで病室を訪れるのだった。
二度目の人生もあなたの妹でありたい→←トキシック・パルチザン【緑川リュウジ】
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涙音(プロフ) - 律果ちゃん！ﾜｰｯｯｯ！！笑まだ新作どれにするか迷い中だよー。律果ちゃんからコメントくるとめっちゃ安心する笑笑ありがとう〜！ (2017年12月3日 16時) (
レス) id: 1a4f25a5d6 (このIDを非表示/違反報告)
律果(プロフ) - なみねちゃーん！ 新作！！！ 書くんですか？！！ ﾜ〜ｯｯ！！ まだ間に合うなら��のやつが好きだよ〜⌒⌒ 理由は……レジジャパが……好きだからです…(懺悔) (2017年12月2日 23時) (レス) id: 78d934a4f5 (このIDを非表示/違反報告)
帰蝶_°? ~kichou°~(プロフ) - 涙音さん» いえいえ！マジですか！やったー！！落ちはてるみんですか！やばいめちゃくちゃ嬉しいです、はい！待ってます！ (2017年12月2日 16時) (レス) id: 28c829f7f7 (このIDを非表示/違反報告)
涙音(プロフ) - 帰蝶_°? ~kichou°~さん» アンケートありがとうございます…………！今のところもう四番書こうと思ってます…………笑笑ちなみに照美さんになりそうです。書いたらこの短編にURL載せるので、もしよかったら覗いてみてくださいね。 (2017年12月1日 23時) (レス) id: 1a4f25a5d6 (このIDを非表示/違反報告)
帰蝶_°? ~kichou°~(プロフ) - 涙音さん» りょーかいです！いつもありがとうございます…！えっと新作のリクの件ですが、私は4番を希望します！理由はですね、単純にフェイ君とてるみんが好きだからです笑笑 あと内容も面白そうでしたので！という理由で希望させて頂きます！ (2017年11月28日 23時) (レス) id: 28c829f7f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：涙音 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/enkorimatsue/
作成日時：2017年1月5日 22時
