UNTITLED ページ32
ライブのことも、喉頭癌のこともSNSで公表した。どこかの事務所に所属しているという訳でもないから、その辺は少しほっとしている。
『ステージ4だったら余命とか言われたんじゃないんですか?』
そのコメントだけにいいねを押して、明日に備えて今日は寝た。
私は1つ、皆に嘘をついた。
__当日、夜7時。
いつもよりお客さんが多い。
「Aの歌が聞きたいからこんな沢山集まってるんだろ」
私のマイクをもっては震えていた。それに気づいた彰人は両手を握る。
「A、怖いのなんて一瞬だ。だから楽しめ」
「…はい」
『彰人と居ると、呼吸が楽になる』
そう冬夜が言っていたのを思い出す。
…なるほど、こういう事か。
「行ってきます」
「楽しんでね!」
杏が元気よく手を振ってくれる。
私を気遣ってか、頑張ってねという激は飛ばされなかった。
私はステージの袖からマイクを持って、灯のある方まで歩き続けた。
__先日公表したように、私は先天性声門下狭症を患っています。そして、喉頭癌があることもお医者様から告げられました。
私は、物心着いた時から歌手に憧れていた。自分が歌えないから、ということもあったのでしょう。けど、小学校の音楽の授業で「歌えない」と先生からキッパリ言われた時に、私は歌手になることを諦めました。
それから音楽が大好きだった私は、今のDJという職業にたどり着いたんです。
お礼を言わせてください。
MOBUさん、私を見つけて下さりありがとうございます。
貴方がいなかったらここまで活動を続けられていないし、もうやめていたかも知れません。…貴方は、私の師匠のような存在です。
Vivid BAD SQUADの皆さん、私と組んでくれて有難うございました。
組んでいなかったら、私の諦めていた夢も叶わなかった。本当に感謝しています。
…この病気は、声枯れや咳が酷いものです。
歌っている途中で止まってしまっても、音源は流し続けて欲しいと音響さんに頼んでいます。
声が今より酷くなったら、耳を塞いで欲しい。
これは、このステージは、私の自己満足で歌う為のものだから、聴きたくなければ帰ってしまっても構わないです。
…ごめんなさい、歌うって言って歌ってないですね。
それでは、改めて聴いてください。
__「ハロ/ハワユ」と「オレンジ」。
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Luna(プロフ) - ヤバい、好き…それで泣きそうめっちゃ泣きそう…。゚(゚´Д`゚)゚。 (2021年4月25日 0時) (レス) id: d4a00b7e76 (このIDを非表示/違反報告)
のんちゃん(プロフ) - 死ぬっていう展開の時に失礼かもだけど、やっぱりこの作品好きだな…… (2021年4月24日 13時) (レス) id: bc0f9be876 (このIDを非表示/違反報告)
のんちゃん - ありがとうございます。お話は全然変えなくて大丈夫です。このままの方が作者様のオリジナルの素晴らしい作品になるのでそこに私が入ってしまうとなんか違う気がしますので、最後まで応援させていただきます。本当にありがとうございます。 (2021年3月17日 18時) (レス) id: bc0f9be876 (このIDを非表示/違反報告)
キリノ(プロフ) - のんちゃんさん» 感想ありがとうございます。物語の結末はもう決まっていて、ここから変えてしまうのは不可能ですが最後まで応援していただけると嬉しいです。知り合いの方には、ご冥福をお祈り申し上げます。私も経験しているので心中お察しします。不快になられてしまったらすみません (2021年3月15日 20時) (レス) id: fda9b97bde (このIDを非表示/違反報告)
のんちゃん - 暗い話をしてしまい、ごめんなさい。嫌でしたら、コメントを消してくださって構いません。 (2021年3月15日 19時) (レス) id: bc0f9be876 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:キリノ x他1人 | 作成日時:2021年2月26日 10時