【鬼滅の刃】月明かりに包まれて【男主】

第11話 要らない ページ13

女鬼は爪で刀を防ぎAを睨む。

「くそっ、こんなところにまでお前らが……！」

「おい女」

月の瞳が細まる。明らかな殺意が宿っている瞳と声に鬼がたじろく。炭次郎たちも固唾を飲んで見守った。

「何故お前が、その耳飾りを持っている」

それは師匠のものだ。お前みたいな低俗な奴が持っていいものじゃない。
爪を弾き思い切り脚蹴りをする。怒りで動いているときは通常よりも攻撃に重さが増す。憎しみを込めているからだろうか。

「はっ、これが気になるのかい？こいつはね、下弦の漆(しち)の鬼がくれたのよ。もう要らないってね」

ピタリ。
さらなる攻撃を仕掛けようとしていたAが止まる。

「いら、ない……？」

見守っていた炭次郎がブルッと震えた。首をかしげているAから深い悲しみと絶望の匂いがしたからだ。
首をかしげている姿はまるで子供のように見えた。要らないと言われたその現実が、Aには受け止められない。

呆然としてしまったAをどうすればいいのか。そういや、あのじいさんが何か言っていたような気がする。と女鬼は思い出す。

「ああ！もしかしてあんたが、じいさんが言ってた弟子？そうね、だって羽織りが同じだもの」

だとしたら鬼狩り1人の精神はここで壊せるかもしれない。今だって要らないと言われて呆然としているのだから。

「残念だねあんた！捨てられてやんの！元々あんたがくれた物もあんたも嫌いだったんだよ！じいさんも言ってたわ！大嫌いだって」

女鬼は笑った。彼は今下を向きうつむいている。震えているのも見えた。
いいぞ、壊れろ。

「A―――――！」

炭次郎は女鬼に斬りかかりたくて仕方ない。あんな酷いことを言われて自分達は動いてはいけないのか。

「……そうか。あの人は嫌いと言ったんだね。良かった」

女鬼は異変に気付く。まとっている空気が変わったように感じた。

「それなら僕も心置きなく師匠を殺せるよ」

月の呼吸 弐の型・如月蛍

風が舞う。刀を振るう。先程とは桁違いの速さに女鬼は避けるので精一杯だ。

如月蛍。それは自分の存在感が増すように呼吸が続く限り攻撃を仕掛ける技だ。
刀の切っ先が女鬼の目の前に迫る。

「ねぇ、そのじいさんはどこにいるか知ってる？知ってるよね、答えて」

「っ、な、那田蜘蛛山だよ！」

那田蜘蛛山。そこに向かえば師匠に会える。

「そう。ありがとう」

月の呼吸 陸の型・水無月恋慕

横に一閃し、女鬼は消滅した。あとに残った耳飾りを、彼は大切そうに拾い上げるのだった。

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