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拾弐話 ページ14

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雨がひどいから飛び出したくない。けど死体に気付いた今、死臭が鼻をくすぐり出した。

ツーンと酸っぱい臭いが鼻に来る。その臭いが胃を更に刺激する。



「きみ、一人なの?」


ふいに優しい声が聞こえた。

煙草の臭いが死臭と同じように鼻をくすぐる。だけどそれは嫌な臭いじゃない。

優しくてふんわりしてて涙がポロポロ出てくる。顔も見えない、服装も分からない。

なのになぜか安心してしまう。


「うわああああああああ!あああ!ああああ!!!」


「えっ!?何で泣くの!?」


こんな大声だしたのこっちに来て初めてだよ。寂しいよ。心が詰まるよ。

こんな死体と煙草の臭いする人に挟まれるとか地獄だよ。


「だいじょーぶ…だいじょーぶ」


ポンポンと背中を擦ってくれる。さらりと髪が私の頬を掠めた。

この人、女の人かな。髪が長い気がする。


「自分の名前、言えるかな?」


違う、この人、声的に男の人だ。胸もない。名前は…


「亜依」


エリスちゃんにもらった、名前はないの?と聞かれうんと頷いたらじゃあ、亜依にしましょう!!と笑顔で言われた。

本当は思い出したかった。けどそれは叶わなくて毎日悪夢を見て過ごした。思い出せないのが罪のようにも感じた。



「亜依、ちゃんか…」


その優しくて甘い声に私は瞼が閉店ガラガラと閉じていった。


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作者名:拳銃 | 作者ホームページ:   
作成日時:2016年7月12日 23時

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