40話 シスコンの鏡 ページ46
「ちっ、あーくそ。」
また、失敗だ。
さっきからずっと隣からYour lostのBGMと舌打ちが聞こえてくる。
こんな初歩的なミスをするこの人は初めて見た気がする。
「はぁ、至さん昨日からぶっ続けっしょ？一旦休もうぜ。」
目の下に隈ができている至さんは代休で翌日が休日な事もあって多分夜通しゲームをしていた。
稽古も仕事もないからってちゃんと寝ろよなといつもこの人が連休の度に思う。この人を寝かしつける役割は基本的には綴と俺が担っているが大人しく寝てくれた試しがない。
流石にミスを連発していれば、たるちって大した事もないんだなと名誉にも関わる事なので一時中断させて昼飯に近い朝飯を取らせようと至さんに声をかける。
「はぁ？お前なめてんの？二徹くらいは余裕だし。」
やだやだと地団駄を踏む二十四歳児に手を焼いていると部屋の扉がノックされてから開いた。
「至さん、万里、昼飯食べるか？」
「綴！！この人下に連れてくの手伝ってくれ！！」
俺の
この人、本当にシスコンだな。と年下にひきづられていく一流商社マンの大人を見ていれば、綴と入れ替えになぜか東さんが入ってきた。
俺この人苦手なんだよな、読めないから。
「万里、お疲れ様。」
「あーいや、あの人とゲームすんのは楽しいんで…。」
それじゃあ俺たちも行きましょと声をかけて部屋を出ようとすれば東さんに名前を呼ばれて引き止められる。
大人しく振り返って東さんと向き合えば、遥について何か知らないかと聞かれた。
遥は今、バレーの合宿で寮を空けていて俺たち学生組が車持ちの至さんの車に乗って誰が一緒に迎えに行くかトランプで決めてたな〜と思い出した。
もちろん俺は辞退していて、高校三年生組や仕事がある天馬は辞退していた。その分シトロンや三角が参加して東さんは遠くからにこにこ笑って見ていた。
「…いや、なんも知らねぇけど。」
ふーんと含みがある返しを受けてなんで聞くのかと聞けば、上手くはぐらかされてしまった。
眉を寄せていればおそらく談話室からだろう、おっさんの怒号が聞こえてきて、至さんが何かをしたという事が一瞬でわかった。
「それじゃあ僕たちも行こうか。」
一足先に俺より部屋を出る東さんにデジャヴを感じた。前にもこんな事なかったか？
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作者名：終夜 | 作成日時：2017年7月18日 14時
