リナリア［短編集］

５秒前 〈そらちぃ〉 ページ19

今、君の隣で歩けること

心の中で喜んでもいいですか。


色んな話を振ってくれるけど、

私の頭の中は君のことでいっぱい。


「あ、俺ん家ここだから。

じゃあな。」


ひらひらと手を振るその後ろ姿に離れるのが寂しくなって。

気づいたら君のカーディガンの裾を引っ張っていた。


「どうした…？」


そうやって優しく顔を覗き込んでくる君のことが好きなんです、

なんて言えやしないから、せめて。


『まだ、空くんと別れたくないな…なんて…。』


あーあ。重い女って思われちゃうかな。

でも、彼の返事は予想してたのと違って。

私の顔の横に、君の首がある。

空くん、思ったより大きいんだな。


「俺、そんなこと言われたら自惚れちゃうけど？」

『え…』

「俺、Aちゃんのこと、好きだよ。

付き合ってくれませんか…？」


初めてのハグ、初めてされた告白。

そして、初めての恋人と今。


空くんが腕を離して、

私の頬を優しく包んだ。



期待してもいいかな？


と、静かに目を閉じる。



初めてのキス。



君と５秒前。

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