実.況してみた【実.況者】 (ページ36)

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実況36 ページ36

生放送が始まる5分前になった。

舞台袖で、MSSPの皆さんと待機しているが少し緊張が収まらない。

「あれ？もしかして緊張してる感じ？」

「あはは、わかっちゃいました？なんか、こうやって人の前に出るの慣れてなくて…。

さっきは、なんとか乗り切れたんですけどね。」

きっくんさんが、様子が可笑しい私に話しかけてくれた。

その顔は、頼れる兄貴分って感じでどこか安心できた。

「あー…柳ちゃん、あんま公式出てなかったしね。」

そう言って笑って右手を差し出した。

「…？」

「んー…きっくんオリジナルの緊張しない"おまじない"を教えて差し上げよう。」

きっくんさんは、自らの右手に私の左手を重ねた。
その上から自身の左手で包んで、

「緊張するの、緊張するの、とんでいけぇ！」

言葉と同時にギュッと手に力を入れた。

暖かな手の温もりと大人の男性らしい大きな手に包まれぼうっとしてしまうが、力が入ったせいで顔を歪めてしまう。

少し痛い。

「…っう。」

「あ、痛かった？！」

驚愕した顔で、ぱっと手を離すと心配そうにもう一度手をとり今度は擦ってくれた。

「あ、ちょっと痛かっただけです。でも、お陰で緊張が取れた気がします。」

「まじで？俺のやつ効果抜群だわ。」(笑)

自慢げに胸を張って笑った。
それにつられてみんな笑う。生放送への不安が一気に取れた気がする。

*

生放送が始まる。

MSSPの皆さんは既に舞台の方へ行っていて、自分は後から呼ばれるシステムだ。

丁度、近くにあったパソコン画面には舞台の映像とコメントでいっぱいだった。

「う、わぁ、すごいな。」

「いや、やっぱりこんなにコメントでいっぱいだとなんか嬉しいよね。」

隣に座るスタッフさんが呑気に笑う。
会場設営をしていたスタッフさんのはずだ。

「やっぱり、自分が準備して色んな人が輝いていると頑張ったかいがあるなっておもいますよね。」

小学校の頃から出し物とかも目立つ役じゃなくて舞台とかの準備係しかしていなくて。

いざ公の場と昔を重ねてみるとその頃の気持ちを思い出してしまう。

「って、ごめんなさい。なんか知ったような口利いちゃって。」

「いやいや、いいよ。こうやって知ってもらえるだけでもなんかありがたいし、ね。」

まるで、縁の下の力持ちのようだった。