実.況してみた【実.況者】 (ページ2)

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実況2 ページ2

「…おはよう、ございます。」

寝ぼけた声でカフェの裏口から休憩室に入った。実質、春だというのに風邪を引いてしまい声もガラガラだった。

私の挨拶に返すように、副店長や従業員も声をかけてくれた。

休憩室には朝礼20分前だというのに、バイトの人も店長も来ていなかった。
周りを見渡して、いないと思ったので荷物を持ちロッカー室へ向かった。

「あ。Aさん、おはよう。風邪でも引いたんですか？すっごく体調悪そうですけど。」

扉を開ける際に後ろから声をかけてきたのは、私よりも長くここで働いている従業員さん。
彼女は人当たりがよく、常に笑顔なため皆からは姉、母的な存在である。

「あー…。おはようございます。なんか、季節の変わり目って風引きやすいんですよね。

それに、私花粉持ちなのでダブルなんですよ。」

ははは、と乾いた笑いを付け加え、苦笑いをする。
終始、困ったような顔をした従業員さんと一緒にロッカー室へ入った。

が、店長もバイトさんも見つからなかった。

朝礼が始まる5分前にはカフェのカウンターの店先に揃っていなければならない。
因みに、ここで遅刻してしまえば罰として食器洗いを手伝わなければならないのだ。

寒い季節に水仕事だけは避けたい、という思いで必ず朝礼20分前には店に入っているようにしている。

店長も来ておらず、副店長は困った顔をしていた。

「うーん、店長いないと作れないメニューあるし、水仕事させたらメニューに取り掛かれないし…。」

皆して顔をうーんと固くさせ、どんよりとしているとガチャリと休憩室と店先を繋ぐ扉が開いた。

「遅れてすみませんっ！寝坊しましたぁっ！」

少々、乱れた衣服に荒い息。冷たい朝東風に向かって走ってきたのだろう。鼻の先と指先は赤く悴んでいた。

副店長が吃驚したのか腕時計を見る前に倒れかけたバイトさんの肩を両手で持った。

「い、一応遅刻にはしないけども大丈夫かい…？それと、店長見なかった？まだ来てないんだよね。」

バイトさんはハッとなったのか副店長の手をそっとどかし深々と頭を下げた。
すぐに顔をあげ何か喋り始めた。

「…そういえば、なんですけど朝俺が家出たときにはゆっくり犬の散歩してるの見ました。

遠すぎて声もかけられなかったです、スミマセン。」

あいつ、さぼりか。

心底、心の中で思った。