【ヒプマイ】明日、また橋の上で【入間銃兎】 (ページ4)

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｢取り乱してごめん｣

裸足でまたいつもの定位置に戻ったAは足を乾かすついでにブラブラ動かした

いつものテンションに戻って……なんならもっと暗い表情のAは手のひらに乗ってるリングを見つめてた

｢やれやれ、困ったクソガキが……｣

確かに、署にいれば尋問で被告人がいきなりあばれることなんてよくある事だ

｢……泣いていい？｣

｢……めんどくせぇ｣

裏返った、消えそうな微かな声で呟いたAの声を聞き逃すことはなくて

何も答えずに優しく、なんとなくAの頭に触れた

思ったよりも柔らかい髪の毛に伝わってくる体温、少しふわりと香るシャンプーのにおいになにかグッとくるものがあった

こんなガキ相手に馬鹿らしい

｢……ごめんほんとに、おかしいよな今日｣

影になって泣き顔こそは見えないが落ちる雫はリングの安っぽい石よりも何倍も光って儚く消えた

｢グズグズしてんじゃねぇよボンクラ……｣

ガキ含め、女に泣かれることはあんまり得意じゃない

どれだけ工作に慣れてたとしてもこれだけは慣れない

俺の手を受け入れて静かに泣くAは威張ってる時の姿よりふた周りも小さく見えて、女らしい

……おかしい

｢……頭やめろよ｣

……今日の俺は思ってるよりもおかしいらしい

頭で動かしてる俺の手を両手で止めて涙目で見上げたAと目が合った瞬間、なにかがストンと落ちた

ガキ相手に惚れるなんてことは、ないだろまさか小便臭いガキでもあるまいし欲求すら溜まってるわけでもないのに……腹が立つ

｢だれがお前なんぞの言うこと聞くと思うか？｣

｢……ああ？！｣

肩下まである黒髪を鬱憤晴らしにぐちゃぐちゃにかき混ぜた

｢痛てぇよ！落ちるだろ！｣

｢ギャーギャーわめくな鬱陶しい｣

じたばたするAを押さえつけるように、こいつのせいで溜まった苛立ちをそのまま全部詰め込んで押し付けた

AもAで両手で頭から手を離すように最大限の弱い力で突き返してきた

｢……っああ！強え！｣

｢あたりまえだろ、年齢と性別考えろよ脳なし｣

落ちないように欄干に足を戻すとそこから逃げるように橋の内側に降りて手から離れた

また肩で呼吸するAは乱れた髪で俺を睨んだ

なにかボソボソ言いながら靴下とローファーを履くとそのままスクールバッグを背負ってしまった

｢帰るわ｣

｢……一生来るんじゃねぇぞ｣

今日はここまでらしい、いつもよりだいぶと早い解散だ