【ヒプマイ】営業先の人【観音坂独歩】

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｢大丈夫……大丈夫｣


ただ優しい声でそれだけ繰り返す独歩は親指で私の涙を拭き取った


暖かい指がさらに涙腺を刺激してボロボロ出てきた



｢……いつから？｣

｢電話は4日前ぐらい……メールもそのくらい｣


｢家に来たのは？｣

｢多分これが初めて｣




慣れたような対処を施していく独歩は物凄く頼りがいがあった

いつもより気持ち優しい声だった



｢……立てるか？｣


でも少しぶっきらぼうな独歩はゆっくり立ち上がった



｢……それくらいは余裕｣



私もそれに合わせて重たい腰を持ち上げた

ありとあらゆる関節がパキパキ行った気がした



｢……警察って開いてるっけ｣



涙もやんで、軽く伸びをするとまた関節がパキパキ言ってスマホのロック画面は24時を回してた



｢……大丈夫なのかよ｣



思いのほか切り替えが早い私にあっけに取られた独歩はスマホを立ち上げた



｢交番なら開いてるだろうし……ついて行く、いくぞ｣


｢あ、おう……｣



手を握られてグイグイ引っ張っていかれた

拒否権はない、……まあそれもそうか



さすがに知ってる女がストーカーに付きまとわれてたりしたらいやでも世話やくわな


ホームからエスカレーター、改札までずっと顔は見せずに引っ張っていく


何一つ言わせない感じ……




｢……俺のせいだよな、ごめん｣


しばらくして、地上に上がるエスカレーターで足を止めた時振り返らずに独歩は呟いた



｢……なんでさ｣



相変わらずの消極的が意味のわからないことを言った


まだ煌々としてる駅の光のせいか、独歩の背中に指す影は濃く見えた



｢俺があの男に刺激を与えたのかもしれない｣



……ああなんだ、そんなこと思ってたのか

少し面白くて、気持ちが軽くなった



頭を抱えてしゃがみこむ独歩はまた俺のせいだとブツブツ言った



｢そんなわけねぇだろ、独歩は何一つ悪くねぇよ｣




駅特有の長いエスカレーターの終わりはまだ先で地上はまだまだ見えない




｢私があの患者を無視したから、患者より独歩の方が大事だったから｣


｢……あ〜｣


けれども独歩は立ち上がる気配はなくまた一層暗く沈んで顔を手でおおって死にそうな声を出した



さっきの私みたいだ



｢……それ無意識？｣


｢……なにがさ｣



暗い顔を上げて私を見上げた独歩は少しムッとした顔だった


何のことかわからなくて少し愛想笑いが零れた



｢俺、お前のせいでしんどい｣



独歩はまた顔を覆ってしまった

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