独 ページ11
「……す、すみません、営業ごときが出すぎた真似を……」
急いでまた頭を下げた
そうだ、俺になんかに心配されてAさんは迷惑がってるかもしれない
そもそも嫌だろ、30手前のこんな陰気臭い男に心配なんかされて
俺は頭を下げながらそんなことを思った
「……?」
が、そんな思考をぶち壊すように散らばった書類の音とガタッという大きい物音が聞こえて顔を上げた
もしかして倒れて……
「Aさん!」
そう思って窓口を除くと倒れた椅子と散らばった書類は確かにあってもAさんはいなかった
不審に思って床からさらに奥に目を移してみるも気配はなかった
「誰か……」
振り返ってもやっぱりこんな時間、待合の椅子には客がいなくて1人でパニックを起こしそうになった
「観音坂さん……」
「はぁ!?」
キョロキョロしてると突然背中に衝撃を感じた
受付から走ってここまで出てきたAさんが俺の背中に抱きついた
……やばい
「観音坂さん……観音坂っさん……」
「ちょ……」
先週よりも色のない腕がお腹に回って力のない声すすり泣かれながら俺をひたすらに呼んで理性が持つかどうかわからなくなってきた
……やばい
「ちょ、Aさん、離れてもらっても」
「Aでいい、めんどくさい」
俺のことをガン無視してさらに顔を押し付けてくるうえにAでいいって……
こういう時、どうすればいいんだよ……
「……A、離れて」
「……」
お腹に回った手をぽんぽんと叩くと案外ずっと離れてくれたAは顔を叩くと落ち着いたらしく伸びをした
「すまねぇな、スーツ濡らして」
また先週までのキラキラした笑顔のAは書類……とかつぶやきながら窓口を飛び越えて受付に入って行った
ちょっと……安心した
「……はい、観音坂さんこれ今週の書類と……あ」
相変わらず切り替えの早いAに呆気にとられてると飴玉の詰めてあるいつもの箱を漁る動きが止まった
「……飴玉今日切れてた、ごめん」
そう言ってカラになった箱を見せてきて誤魔化すように笑って自分の荷物を漁り始めた
「代わりになんか、あればいいんだけど……」
「……じゃあ、俺のこと独歩って呼んで」
……は?俺今なんて言った?
自分で言ったことに自分で思考回路を止めてしまってまた先週みたいに逃げ出したくなった
急いで貰った書類を鞄に詰めた
俺ももう疲れが溜まりきってるのかもしれない
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失格人間。(プロフ) - おおわああああああぁぁぁ最高ですです!!更新頑張って下さい!!!!!! (2019年4月4日 12時) (レス) id: bb922c1436 (このIDを非表示/違反報告)
ままま(プロフ) - むぎさん» コメントありがとうございます、わああ嬉しいです!!ない脳みそを絞りに絞ってネタ考えます、、今後も何卒あよろしくお願いします (2018年12月3日 12時) (レス) id: 16f3e8df7f (このIDを非表示/違反報告)
むぎ(プロフ) - あの…続編……早く読みたいです…めちゃくちゃ面白かったです!!!まじ独歩最高です! (2018年12月2日 23時) (レス) id: 3e1d248cd9 (このIDを非表示/違反報告)
ミレナ(プロフ) - まままさん» いえそんな!!楽しませてもらってます!!頑張って下さい!! (2018年8月27日 19時) (レス) id: 8824a387c8 (このIDを非表示/違反報告)
ままま(プロフ) - ミレナさん» コメントありがとうございます、私の語彙力が酷いもので申し訳ないです、楽しんでいただけたなら幸いです、今後も何卒よろしくお願いします (2018年8月27日 19時) (レス) id: 16f3e8df7f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ままま | 作者ホームページ:󾮗
作成日時:2018年6月30日 12時