【魔法と学園モノ】〜理不尽な世界でも君と笑いたい〜

第23話：祈祷 ページ25

２時間目の授業の内容は、祈祷師(シャーマン)の技術である祈祷についてだった。

祈祷は魔法等級の8級に定められた技術で、簡単に説明すると神に祈りを捧げて、その加護を受けるためのものだ。雨乞いや日本晴れといった天候操作は勿論、農作物の豊作祈願や人々の幸せを願う幸福祈願などと、様々なことを行う。

この『祈祷』を行う上で大事なものは想いの強さと魔力量。ただ、どちらか一方があればいいと言うわけではなく、どちらもバランスよく使う必要がある。


「やり方は今黒板で説明した通りです。では各自で練習しましょう！」


みんなに説明しながら黒板に向かっていたクリス先生は、くるりと体をこちらに反転させる。それを合図にノートに先生が書いた内容を書き写していたみんなもペンを置く。そして授業開始前に配られていた、巻物を机の上に広げた。

この巻物は、魔法を練習するためのもので、これに書かれた魔法陣の上で魔法を使うと、その範囲内だけで魔法が反映されるようになる便利なものだ。だからもし魔法が失敗しても、周りに危害が及ぶ危険はない。


「あらアイリスちゃん、凄いじゃない！」


教室内を歩きながら一人一人の様子を覗いていたクリス先生が声をあげる。先生はアイリスの前に立って、彼女の魔法陣の中をまじまじと見ていた。

その小さな空間では、雨雲が生まれたり小さな太陽が顔を出したりと自由自在に天候が操られていた。


先生に褒められたアイリスは頰を赤らめて嬉しそうに笑う。

祈祷のやり方はたった今習ったばかり。だけど、親の方針で入学前から祈祷の技術を習っている人もいた。

アイリスもその1人だ。彼女の両親は有名な呪術師で、祈祷の技術も優れていた。そんな両親を見て育った彼女は自分も親のようになりたいと、この魔法の練習をしていた。その上強い意志と他人を思いやれる優しさがある。想いの強さで左右されるこの魔法は彼女の十八番だった。

クリス先生はアイリスのことをひとしきり褒めた後、見回るために再び教室を歩く。


「あら、オリヴィアちゃん。大丈夫？」


ピタリと先生が足を止め、私の机の上の魔法陣に目を向ける。魔法陣内では雷雲が生み出され、異常気象が発生している。雨乞いをしようとしていたはずなのに、雷雨を起こしてしまう。これは祈祷において大失敗である。

祈祷は想いの強さによって成立するもの。赤の他人のことなんてどうでもいいとの考えを持つ私は、この魔法が昔から大の苦手だった。

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