第四十八夜:交渉成立 ページ3
堕転したマギの性格を思い返して、少々失礼なことを考えていたら突然取引を持ちかけられた。
「そこで、だ。俺と取引をしないか?」
ずっと観察して分かったことだが、紅炎さんに対する周りの反応からするに彼はそこそこの権力の持ち主であることは間違いないだろう。さっき僕の処遇を独断で決めたこと、それから彼の年齢から鑑みるにおそらくこの国の皇子ってとこか。それも一番上の。
そんな男が持ち出す取引とは一体なんなのか気になったから、聞くだけ聞いてみようと紅炎さんの方へ向き直った。
「お前、仲間とはぐれたんだろう?それでそいつらと合流しようと急いでる。」
「……分かってるなら、すぐにでもここから出して欲しいんだけど。」
「お前、その仲間の居場所分かるのか?」
おそらく頭のキレそうな紅明さんから、僕が迷宮に入ったことを聞いたんだろう。
魔導士である僕が迷宮を攻略するメリットは少ない。何故なら魔導士は人に認められて金属器使いになることはできないからだ。それなのに僕が迷宮に入った話をしたから、僕の他に仲間がいたと考えた。
内心を言い当てられ、何もかも見透かされているような気がして少しムッとしてしまう。言い返せずに黙り込む僕を見て紅炎さんは続けた。
自分がその人探しを引き受ける、と。
煌帝国は今、領土拡大を続けており各地に拠点を置いているそうだ。その拠点に待機している兵士の力を使って、アリババとアラジンを見つけてくれるらしい。しかも見つけた後は、転送魔法で目的地まで送ってくれるときた。
「随分とうまい話だね。……そんで見つかるまでの間ここにいて、僕に魔法をといて欲しいってこと?」
「話が早くて助かる。勿論、滞在中はお前のことを客人としてもてなすつもりだ。」
正直、願ってもない話だった。
実際アリババ達の居場所に心当たりはないし、ただあてもなく彷徨うだけのお金を持っていなかった。
人探しをしてくれる上、衣食住まで保証してくれるという彼の提案は魅力的だった。
「……分かった。その話に乗るよ。」
それから紅炎さんの行動は早かった。客人と迎え入れるための手続きを手早く済ませたので、僕はあの監視付きの小さな部屋から天幕付きのベッドが置いてある立派な部屋へと移動になった。没収されていた金属器と剣も手元に戻ってきた。
今日はあの巻物に集中するらしく僕の仕事は明日からでいいとのことなので、遠慮なく休ませてもらおう。
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ブルー★アース(プロフ) - おもしろいです!続き希望 (2020年8月14日 13時) (レス) id: 45f118772d (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - 更新楽しみです (2020年6月6日 3時) (レス) id: 0e552ce067 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - イルさん» イルさん、ありがとうございます。面白いと言ってもらえてよかったです。魔法の名前は、アラビア語を参考に付けてます! (2020年5月17日 12時) (レス) id: 2cfa1564f2 (このIDを非表示/違反報告)
イル - 作者さん!すごく面白いです!!あと、魔法の名前ってどうやって決めてるか気になります! (2020年5月17日 8時) (レス) id: 9fea9825a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:えるふぃ | 作成日時:2020年5月15日 16時