第四十七夜：その男、自己中につき ページ2
扉にかけていた手を離し、振り返ると鋭い目をした紅炎さんが僕の目をじっと見つめてきた。さっきまで巻物に集中してたくせに、自分の用事を思い出した瞬間僕に話しかけてくるなんて都合のいい奴だ。
「お前は魔法がかかっている巻物をすぐに判別できるのか？
それともさっきみたいに中身を見なければ判別できないのか？」
「中身見なくても判別できるよ。魔法使えば、だけど。」
「なら今すぐに俺が持ってる全ての巻物を見ろ。そして全ての魔法を解け。」
その質問の内容にまさか、と思いながら返答するとやっぱり僕の予想通りの答えが返ってきた。
この紅炎という男の世界はとことん自己中心的に回っているらしい。
「あのねぇ、僕にだって都合があるんだよ。それにこの国にだって魔導士くらい沢山いるでしょ？」
僕が今さっき使った魔法は、それこそ誰にでも使えるものではないがある程度魔法を極めたものならば使いこなせる魔法だ。魔法をかけるならまだしも解くだけならばそんなに難しくないし、消費する魔力の量も少なくて済む。
ただ、どの巻物に魔法がかかっているかどうかその人達に分かるかは別だが。
僕ができると言ったのは自分で編み出した魔法の中に、たまたま用途が一緒のものがあったから。
「っ、こいつ、もう我慢出来ん……。さっきから黙って聞いてれば！！」
するとさっきとは別の人物が怒りを露わにした。男は周りが止めるのも気にせず、僕の方へ詰め寄ってきて、そのまま僕の胸ぐらを掴み上げた。男の体格は紅炎さんの家臣だけあってがっしりしており結構な身長差があったため、僕の体はいともたやすく宙に浮く。服の襟が喉を圧迫して苦しい。
反撃してもいいものか迷う僕を助けてくれたのは意外なことに、終始やる気なさげだった紅覇さんだった。
「無抵抗の相手に手をあげるのはよくないよ。炎兄だって何も文句言ってないんだから。」
彼は僕の胸ぐらを掴む男の手を右手で掴んで、男の行動を制した。男はまだ不満そうだったが流石に紅覇さんには逆らえなかったみたいで渋々手を離してくれた。
「……この国の魔導士は訳あって頼れない。ジュダルがその魔法を使えれば別だが、おそらく無理だろう。」
紅炎さんはこちらの様子に目もくれずしばらく黙り込んだ後、やっと口を開いた。
ジュダルといえば、あの僕に喧嘩を売ってきた堕転したマギのこと。確かにあのマギは随分好戦的だったから、戦いに関係のない魔法なんて作ってもいないだろう。
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ブルー★アース(プロフ) - おもしろいです！続き希望 (2020年8月14日 13時) (
レス) id: 45f118772d (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - 更新楽しみです (2020年6月6日 3時) (レス) id: 0e552ce067 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - イルさん» イルさん、ありがとうございます。面白いと言ってもらえてよかったです。魔法の名前は、アラビア語を参考に付けてます！ (2020年5月17日 12時) (レス) id: 2cfa1564f2 (このIDを非表示/違反報告)
イル - 作者さん！すごく面白いです！！あと、魔法の名前ってどうやって決めてるか気になります！ (2020年5月17日 8時) (レス) id: 9fea9825a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えるふぃ | 作成日時：2020年5月15日 16時
