第四十六夜：巻物の秘密 ページ1
僕は今、人生で一番と言っていいほど緊張していた。
広げられた巻物と立ち僕を急かすように睨みつけてくる紅炎さんを前に、巻物に向かって杖を翳す僕。そしてそれを取り囲む大勢の紅炎さんの家臣達。
いくら紅炎さんが僕の煌帝国侵入を許し、魔法を使う許可を出したからとはいえ、こんな怪しい僕を目の前にみんなが警戒を解けるはずもなく、みんなが僕に注目している。刺すような視線が痛い。
「……ごほん。えっと、じゃあ始めるね。」
このまま何も合図せずに余計な動作をしたらそれこそ刺されかねないので、今から魔法を使うぞと宣言してから杖に魔力を込めた。
今から使うのは攻撃魔法でもなんでもない。魔導士が日常的に使う魔法の一種だ。
「
呪文を唱えた瞬間、杖先から淡い光が飛び出し巻物を包み、その文字を宙に浮かび上がらせる。浮かんだ文字は時折形を変えながら元の文字列を無視して再び巻物の中に収まっていく。しばらくすると宙に浮いていた全ての文字が巻物の中に吸い込まれていき、巻物を覆っていた光も消えた。
「……ほら、これできっと問題なく読めるはずだよ。」
僕は巻物にかかっていた魔法を解いた後、すぐに翳していた杖を下ろした。これ以上翳し続けて敵意があるとみなされちゃたまったもんじゃない。
紅炎さんは僕の言葉を聞いてすぐに椅子に座り、巻物に目を落とした。瞬きする時間も惜しいようで、食い入るように巻物に目を通す姿に思わず苦笑が漏れる。この巻物のせいで僕は無駄に煌帝国に一泊させられたんだから。
何はともあれせっかく何もかもお咎め無しでだったのだから、一刻も早くこんな国からおさらばしよう。早くアラジンやアリババ達に合流しなければいけないし。
巻物に夢中になる部屋の主に背を向けて部屋を去ろうとする。今こちらから声をかけたら面倒そうなので、あの話が分かりそうな紅明さんにでも言って金属器と剣を返してもらおう。そして今日中にここを立とう。そうしよう。
「おい、待て。」
「……なに？」
だけど僕のそんな計画は彼の呼び止めによって阻止された。さっさと部屋を出ていけばよかったなんて後悔はもう遅い。なんだか嫌な予感はしたが、このまま無視して部屋を出るわけにもいかず返事を返してしまった。
思えばこの時から僕の運命は狂い出してきたに違いなかった。
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ブルー★アース(プロフ) - おもしろいです！続き希望 (2020年8月14日 13時) (
レス) id: 45f118772d (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - 更新楽しみです (2020年6月6日 3時) (レス) id: 0e552ce067 (このIDを非表示/違反報告)
えるふぃ(プロフ) - イルさん» イルさん、ありがとうございます。面白いと言ってもらえてよかったです。魔法の名前は、アラビア語を参考に付けてます！ (2020年5月17日 12時) (レス) id: 2cfa1564f2 (このIDを非表示/違反報告)
イル - 作者さん！すごく面白いです！！あと、魔法の名前ってどうやって決めてるか気になります！ (2020年5月17日 8時) (レス) id: 9fea9825a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：えるふぃ | 作成日時：2020年5月15日 16時
