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新しい本丸はとてもきれいだった。それこそ、新築と見紛うほどに。中古だと知ってはいた。
「ここまで綺麗な所をあてがわれるとは」
よほど大事にしたくないようだ、と山姥切は皮肉に笑う。ぐるりと本丸を見て回り、その日は眠ることにした。今日の夜警は鳴狐。
「おやすみ」
鳴狐の声は心地よく、私の心を流れていく。パチ、と電気のスイッチが消え、暗闇が部屋を満たす。お供が私の布団に潜り込む。
「主殿、安心してください。ここにあなたを脅かすものはおりません。たとえ何かが来ても、全て鳴狐が切り捨ててみせましょう。だから、何も気にせずおやすみなさい」
柔らかなお供の声。私の涙で毛皮を濡らすことすら厭わずに、腕の中から前足を伸ばす。
「全て忘れて、お眠りなさい。すべてを預けて、お眠りなさい。暗闇は味方、敵は全て捨て置きました。憂うものなど何もない」
連綿と続く言葉が私をゆるく縛り上げる。まぶた越しに手の感触を感じ、私は眠りに落ちた。
＊＊＊＊
目が覚めたのは深夜2時。喉の渇きを覚え、布団を抜け出す。
「どうした、主」
襖を開けると鳴狐が少し見上げるようにして聞いてくる。あぐらをかき、腕を組んだその姿勢はいつもより一層頼もしく映る。
「喉かわいちゃって。厨行って水飲んでくる」
「鳴狐も行こう」
すっ、と彼は立ち上がり、私の少し先を歩く。昔の夫婦のようだな、と思うとおかしくなった。
ある一室からはまだ煌々と光が漏れている。早く寝ればいいのにな、と思いつつ、静かにその前を通り過ぎた。
＊＊＊＊
厨で飲んだ水は冷たく、涙のような味がした。
嗚咽が漏れているのを自覚しつつ、私は目元を拭う。
暖かな手のひらが私の背を擦る。
「大丈夫」
鳴狐の声。
ふ、と空気が動く気配がして、厨の入り口に人影が立った。
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匿名狐(プロフ) - 夕月 刹那さん» わ！良かった！そう言っていただけて嬉しいです！ありがとうございます！ (2018年5月30日 15時) (
レス) id: 19251f6155 (このIDを非表示/違反報告)
夕月 刹那(プロフ) - これ、私の好みドストライクです！次の更新が待ちきれない、、、！ (2018年5月29日 19時) (レス) id: 87fbf3b4b6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：匿名狐 | 作成日時：2018年5月23日 22時
