任侠には興味なし【d!】 (ページ38)

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ショッピ君を呼び戻すには、お酒を頼む必要がある。

横を見ると、ショッピ君にベタベタ触る化粧っ気のある女の人が見えた。きっとあの人が呼んだのだろう。

その女の人は勝ち誇った顔で私を見てきた。

『はぁ...』

いよいよ面倒くさくなってきた。

勘違いされると困るが、私はあくまで【仕事】として潜入してるのだ。厄介事には極力巻き込まれたくない。

「どうしたの？ため息なんかついちゃって。」

『あ、ツバキさん。』

「俺の名前覚えててくれたんだ、嬉しい。」

ツバキさんはシャンパングラスを片手に私の隣に座る。
ほんのり甘い香水の香りが漂った。

「クレの横にいるのはエースだよ。」

『エース？』

「え、お姉さんそんなのもわかんないでまた来たの？」

『うう、ごめんなさい...』

「いいよ、謝らないで。エースってのは最高の太客のこと。つまりクレにお金を最も費やしてる姫って訳ね。」

『なるほど』

「お姉さんは今、クレのこと呼び戻したいと思ってる？」

『まあそうですね。』

「じゃあ、このメニューのここ、シャンパンを頼んでみて。絶対戻ってくるからさ。」

『...わかりました。』

ツバキさんの指さす場所には「シャンパン5万円～」と書かれていた。こんな高いのかと驚愕するも、呼び戻すためなら仕方ないと決心する。

それにしてもツバキさんは何故こんなに親切にしてくれるのだろうか。

『あの、ツバキさん。』

「ん？どうした？」

『どうしてこんなに色々教えてくれるんですか？もし私がシャンパンを頼んだら、クレ君の売上が上がるじゃないですか...』

「んーいいのいいの、だって俺、NO.1ホストだからさ。」

『ナンバーワ...えっ！？』

「あれ、知らなかった？」

衝撃の事実だ。私は今、ここのナンバーワンと話していたのか。驚きのあまり彼の顔を呆然と眺めてしまう。

そう言われてみると確かに彼、ショッピ君と同じくらい顔が整っている。そして話しやすい。納得するのと同時に申し訳なさを感じた私は謝ることしか出来なくなった。

「わー！大丈夫だから！お姉さん、きっとまだホスト行きなれてないでしょ？仕方ないから謝んないで！！」

『ずみまぜん...』

「それに俺、個人的にお姉さんに興味があるから近づいてるの。名前覚えてもらってるだけで正直めちゃくちゃ嬉しいから、ね。」

そう言って彼は名刺を差し出す。

「これ、俺の連絡先が書いてる特別なやつだから」

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