任侠には興味なし【d!】 (ページ28)

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「そういえばA、そろそろ戻らなあかんのちゃう？」

『あっ...本当だ。』

「なら、ホールまで送るで。」

『うん、ありがとう。』

ゾムから少し離れて歩き始めるが、それはすぐに阻まれてしまう。彼は私の隣にピッタリくっついて、腰に手を回してきたのだ。

先程のこともあってか、添えられた場所がゾクッとする。

『わざとやってるよね？』

「だって反応が面白いんやもん。」

『はぁ...』

随分困った人を雇ってしまったかもしれない。

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ホールに戻ると、ゾムは人混みの中に紛れてしまった。

どこか寂しそうな目をしながら去る彼の顔が脳裏に焼き付く。父のこと殺さなければ良かったのに、なんて考えてしまう愚かな自分がとてつもなく馬鹿馬鹿しかった。

「おー、A、ほんまに待っとったんやな」

『あ、お疲れ様です、コネシマさん。お仕事の方は...？』

「上手くいったで。Aは誰かと話したりせんかった？」

『実はまだ誰とも話してないんです...』

「そかそか、まあ、まだ裏社会に来て間もないからなあ、ぼちぼち慣れていこうな。」

『すみません...』

コネシマさんは｢謝らんくてええよ｣と豪快に笑う。
彼の笑いに反比例して私の笑顔は弱々しくなった。

こんなに良い人なのに嘘をついて良かったのだろうか。

「せや、せっかくなんだから、なんか踊って帰るか？」

『でもコネシマさん、他の誘い断ってませんでしたか。』

「何の話やろな。」

コネシマさんはこっちを向いて「お嬢と踊れることほど名誉なモンはないから」と言う。
これは、まともに楽しめてない私に、少しでも思い出を残してあげたいという彼なりの気遣いなのだろう。

『私、踊りなんて知らないですよ！』

「んなもんなんとかなるやろ！俺もようわからんけど！！」

ゾムとのダンスと打って変わって滅茶苦茶ぎこちなかったが、曲の雰囲気もあってか社交ダンスのような感じはなく、小学校のキャンプファイヤーのようなノリで楽しめた。

「意外といけるもんやな！！」

『ですね！！私今すごく楽しいです！』

「ははは！それりゃあ良かったわ！」

コネシマさんの明るいノリにつられて、周りの人々もどんどんと円状に踊り出す。

「そういえば、今日のAはめちゃくちゃ綺麗やな！」

『それ今言います？』

「ずっと言い忘れとったからな！」

楽しそうに笑うコネシマさんを見て、私も自然と笑顔になった。

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