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ようやく一曲終わり、ゾムは私を連れてダンスを踊る一行から離れる。
「どう？楽しかったやろ？」
『うん。すごく楽しかった。』
まだ収まらない顔の熱を逃がすようにパタパタと仰ぐ。
「なあA、ここ暑苦しいやん？」
『そうだね…』
「ちょっとだけ抜け出さへん？」
いいよ、と言い出したかったが、先程コネシマさんを待つと宣言した手前、動くことが出来ない。
『抜け出したいけど、コネシマさんg』
「俺よりそっちの男の方が大事？」
『いやっ…ちがくて』
「じゃあええやん。あいつが戻ってくる前にまたここに戻ればええし、な？」
『う、うん。』
ゾムは手を引いて堂々と人混みを進んで行く。
人々の中にはゾムの顔立ちに見とれる者もいたが、そんなのお構い無しに歩き続けた。
中庭に出ると先程の熱気は嘘のように消え、辺りはしんと静まり返っていた。
「はー、やっぱ外の空気は気持ちええな！」
『だね...』
なんだか物寂しいほどだ。
中庭も西洋のテイストで、中央には大きな噴水があった。
私とゾムは付近のベンチに腰をかける。
ふと、ゾムが真顔になって言う。
「なぁ、A、なんでここまで来たかわかる？」
『...？いや、わかんない。涼むためじゃないの？』
「ちゃうねん、あんた、ほんまに何も考えてないねんな。」
『え...は！？』
考える時間もないままゾムに押し倒される。
彼の目は普段よりも鋭く光っていた。
「ええか、そのまま動くなよ。」
『え、ちょっと...ん...ぁ...』
押し付けられる唇。予期せぬことに焦りを隠せない。
彼が角度を変えて接吻する度に甘い吐息が混ざる。脳みそは恥ずかしさと驚きとでみるみるうちに溶けていった。
しばらくすると、彼は突然止まる。
「...もう大丈夫や。」
『え...』
ゾムは立ち上がり、私の腕を掴んで立たせた。
「きっしょいオッサンがAのことを追いかけてきてたで。だからあえて見せつけたったわ。」
『嘘、気づかなかった…』
無邪気に笑いながら、衝撃の事実を告げる。そこで、さっきのことに悪気はないのだとすぐに分かった。
だけど、
『あの...他のやり方はなかったのでしょうか...』
「んー、これしか思いつかんかったわ、それに...」
彼は妖艶に笑い、「ご主人様の味を知りたいと思っちゃあかんか？」と言った。
きっと私の顔は茹でたこのように真っ赤だっただろう。
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作者名：らあ。 | 作成日時：2022年11月7日 21時
