11.踊りませんか ページ26
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コネシマさんが数々の女性の誘いを断り続けて30分、今度はスーツを着た男がこちらに向かって来る。
「やあ、捏島君。」
「お久しぶりです。」
「最近はどうかね？」
「いやー、ぼちぼちですわぁ。まあ、ここで話すのも何ですし、少し向こうへ」
「ふむ、そうだな。あ、お嬢さん。彼を借りてくがいいかね？」
『大丈夫です。私はここで待ってるのでお構いなく…』
「ははは、よく出来た子だ。彼女は？」
「我が組長の娘、桃瀬Aです。今年からこういう集まりにも参加することになりまして。」
「なるほど、これは失礼。」
「まあ、行きましょうよ」
コネシマさんは半ば強引に腕を引きながら、その男と共に会場から出ていってしまった。
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お構いなくとは言ったものの、コネシマさんが居ないと、私はいよいよひとりぼっちだった。
ダンスもまともに踊れないし、知り合いが近くにいる訳でもない。感じるのは汚い大人の卑しい視線だけ。
私はいたたまれなくなって、ただ床を見つめていた。
正直もう帰りたいと思った。
そんな中、誰かが「一緒に踊ってくれませんか。」と声を掛けてくる。
もちろん私は「すみません」と断ろうと顔を上げるが、その顔を見て驚く。
『え、ゾム？』
「んふふ、来てもうた。」
目の前には満面の笑みのゾムがいた。
髪の毛をきっちりセットし、いつにも増してかっこよく見える。
『なんでここに…？』
「言ったやろ、ずっと護衛するって。なあ、暇なら俺と踊らへん？」
『でも、私踊りなんて習ったことないよ』
「大丈夫やって、俺がエスコートしたる！」
『うわっ！！』
思い切り腕を引かれ、ダンスを踊る群衆に紛れ込む。
覚束ない足取りでステップを踏むが、ゾムが背中を支えてくれるおかげでなんとか倒れずに済む。
「ええやん、その調子やで」
背中に腕を回しもう片方の手を優しく握るため、自然と私と彼の距離はほぼゼロだ。
彼の端正な顔立ちを目の前で見ると惹かれてしまいそうなので、必死にしがみついて顔を見ないようにする。
「何？恥ずかしいん？」
『いや、ちょっと、緊張しちゃって。』
「んふ、可愛ええな」
彼は面白がってるのかわざと耳元で囁いてくる。
会場内の熱と、私の顔の熱とが合わさって最早何も考えられなくなる。
一曲終わるまで、私の心は落ち着きを取り戻さなかった。
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作者名：らあ。 | 作成日時：2022年11月7日 21時
