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『父とは幼い時に死別しました。生きているわけ.....』
目の前にいる男は腕を組んで困った顔をしていた。
「いや、生きてるんやけど。」
『こ、根拠はあるんですか？』
彼はとうとうどう説明すればよいか分からなくなってしまったようだ。
だから生きてんねん、としか返事をしなくなってしまう。
すると、先程この男に怒鳴られていた男が呆れた表情を浮かべて近寄ってきた。
「お嬢すんませんなあ、コネシマは親の気持ちを知らずに生きてきたんで」「は？」
おー怖、とか言いながらわたしの隣に座る。
よく見るとこの男、私の事を誘拐した張本人だ。
「あ、どうも鬱島大ですー。大先生って呼んで欲しいな」
『嫌です』
「あああさっきはすまんかったって！！」
『…』
頭を何度も下げながら謝罪してくる彼を見ると、自然と悪い人ではない気がしてくる。
『もういいですよ、生きてる訳だし、大丈夫です』
「優しすぎるやろ、ありがとなあ」
彼は手を握ろうと伸ばしてくる。さすがにそこまでは許せないので咄嗟に避けると「あん冷たい」と一言。
一瞬で空間が冷えきってしまう。
誤魔化すかのように彼は続きの話をする。
「んん…それで、さっきの続きなんやが、お嬢の苗字はほんまは『桃瀬』やねん。今使ってんのは多分母方の苗字やろ？お嬢、自分の父親の苗字聞いたことある？」
『そういえばないですね…』
「せやろ？まあ、そういうことやねん。あとこれ、戸籍。ここに桃瀬屯って書いとるやろ。」
1枚の紙を見ると、確かに桃瀬屯の文字が。
じゃあ、本当に私は《我々組の組長の娘》、、？
『…私が組長の娘なのは事実なんですね。』
「お、分かってくれたか、お嬢」
捏島は腕を組んで満足気に笑う。
『はい…それで、私は何のためにここへ…？』
「んまぁ、ここからが長いねんな」
そこからはどうして私が今になって連れてこられたか話してくれた。
簡単に言えば、組長が逮捕されたらしく、釈放までの間何かあると困るから、血の繋がった私に帰ってきてもらったらしい。
私がいることで組に手出し出来ないようにしたんだとか。
組長はもうすぐ釈放されるらしいので、しばらくの間私はここで生活すれば良い。
釈放されたらまた自由の身に戻ってもいいのだ。
ならばいいかと軽い返事をした私はこの中で生活し始めることになった。
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作者名：らあ。 | 作成日時：2022年11月7日 21時
