4.キモチの結晶 ページ10
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ネモちゃんに相談してから1週間。
ようやく気持ちを固め、本日、グルーシャに会いに行くことにした。
ただ、今日はあまり天気が良くない。
ナッペ山の頂上が見えないくらいには悪かったのだ。
それでも、今日行くと決めたからには行く。
今日みたいな日の方が、ジムチャレンジするトレーナーも少なそうだし、きっと彼の都合もいいはずだ。
ジムまでの道のりはかなり不安定で危なかったが、私は挫けずに歩き続けた。
ジムにつき、躊躇いがまじりながらも受付の人に話しかける。
『あの、ジムリーダーのグルーシャさんにお会いしたいのですが。』
「当ジムリーダー、グルーシャとの勝負でしたら...」
『えと、勝負じゃなくて...お話したいことが...。』
「ああ、えっと...大変申し訳ありませんが、こちらでは判断しかねます。」
『そ...そうですよね。すみません。』
現実はそう甘くない。
ジムリーダーになってしまった彼と会うのは、より一層難しくなっていた。
そもそも、本来なら彼と会うことすら簡単じゃなかったんだ。
この前会えたのは、本当に最後の奇跡だったということだ。
心残りはあるが、会えないなら帰るしかない。
受付の方に帰ることを伝えようとしたその時、
「こんなサムい日に勝負を挑むなんて、あんた、変わってるよ。」
あの聞き馴染んだ声が、再び私の元に届いたのだ。
奥の方から気だるそうに歩いてやってくるグルーシャに、私の心は緊張を隠せなくなっていた。
「こんな天気の中、ジムテストなんてやった...ら。.....え、A...？」
こちらに気がついたのか、足を止める。
驚いた表情のまま固まってしまったので、私はそのまま彼に要件を伝えることにした。
『この前助けてくれたお礼をしたくて...その、来ちゃいました。』
「お礼なんて、いいのに。」
『ごめん。私の気が済まなくて...もし、嫌じゃなかったらこれ、受け取って欲しい...です。きのみで作ったタルトなの.....。』
「...もらっていいの？」
『うん。私が作ったから美味しくないかもだけど...。』
彼は、私の近くに寄って、差し出した紙袋を受け取ってくれる。
「ありがとう。」
表情は変わらなかったけど、かすかに喜んでいるように見えた。
「あのさ、もしよかったら、一緒に食べてかない？」
ああ、本当に今日は願ったり叶ったりな一日だな。
『いいよ。一緒に食べよう。』
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作者名：らあ。 | 作成日時：2023年2月24日 20時
