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グルーシャだ。
あの声は、間違いなくグルーシャの声だ。
でも、昔とどこか違う。
何だか、その声は、吹雪のように冷たい。
そっか。
そうだよね。
私は、彼の声が聞こえなかったフリをした。
こうしないといけないって誰かが私に囁いたから。
そのまま、何も返事をしないで踵を返す。
ゆっくり、ゆっくりと。
1歩ずつ。
「待って！！！」
今度はもっとハッキリ聞こえてくる。
彼が誰か確かめようと追いかけて来ているのだ。
私も追いつかれないよう彼と同じ速度で山を下る。
凄く胸が締め付けられる。
苦しい。けど、我慢しないと。
そんなことを考えてたから頭が回らなかったのだろう。
突如としてバランスを崩してしまう。
フラついたが最後。何も出来ないまま私の体は前のめりに倒れていった。
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ように思われた。
「危なッ。雪山で転ぶなんてサムいで済む話じゃないか.....ら.........。」
ギリギリのところで、腕を引っ張られて助けられる。
そのまま、私の体はその腕の中へ飛び込んでしまった。
モコモコしたアウターを羽織ってても分かるくらい筋肉質な腕。恐ろしく寒いこの場所では異質なほど暖かい腕。
後ろから掛かる声に、心臓が破裂しそうだった。
ああ、グルーシャが、私のことを助けてくれた。
そう考えるだけで、涙は滝のようにとめどなく流れる。
一方の彼も、私のことを見て動きを止める。
それは、思考を停止しているかのように、全く動かない。
やっとの事で出た一言は「え.....。」だった。
『ごめんなさッ.....。』
「待って。」
『わ、私は大丈夫なので』
「あんた...A...だよね？」
ああ、神様。
こんなにも最悪な再会、あってもいいのでしょうか。
耐えきれなくなって私は彼から離れる。
それでも彼はまた私の腕を掴む。
いくらもがいても逃げ出せないほど強い力で私を抑え込むのだ。
「お願い、逃げないで。」
その、彼の消え入りそうな声で、我慢していた私の体は氷の如く固まってしまった。
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作者名：らあ。 | 作成日時：2023年2月24日 20時
