溶けないのは愛【pkmn】 (ページ11)

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「うん。おいしい。」

『ホントっ...！？』

無言で食べていたので少し不安だったが、どうやら大丈夫だったらしい。上品にタルトを食べるその姿はとてつもなく様になっていた。

「そういえば、大会がある度に差し入れくれたよね。」

『覚えててくれたんだ。』

「忘れるわけないよ。だって、それがいつも楽しみだったから。」

『ふふ、嬉しいな...。』

私が笑ったのを見ると、グルーシャもふ、と少しだけ笑みを零していた。彼の笑顔、久々に見た気がするな。

『...ジムリーダーやってんだってね。』

「うん。今のぼくには、これしか残ってないから。」

『そっか...。』

「幻滅した？」

『ううん、むしろ、今も頑張ってて凄いなって思った。』

「...っ。」

グルーシャの瞳が揺らぐ。
私の返しが予想外だとでも言いたげに。

『この前の質問...。今答えてもいいかな。』

「何のこと？」

『“なんで、ぼくの元に来なくなったの？”ってやつ。』

「それはもういいよ。忘れて。」

『ダメ。私の話、聞いてほしい。』

「.....。」

彼は憂いを帯びた目で、少し悲しそうな顔をしながら、小さく頷く。そして、言葉を待つかのように私の顔をしっかりと見つめていた。

『私の顔を見ると、スノーボードのこと思い出して、辛くなっちゃうんじゃないかって...そう考えたからなの。』

「え...。」

彼は、再会してから一番表情を顕にしながら驚いた。
そのまま、ユキメノコにでも凍らされたかのように硬直してしまう。

そこでハッとする。

彼にこの話をするのは良くなかったかもしれない。
考えても手遅れな後悔が私の体を蝕んでいった。

『ぁ、ごめッ...』

もうここにいない方がいい。本能がそう告げてくる。

私は急いで荷物を集め、帰ろうとした。

「そんなことない。」

その思いは、彼の一言で全て無くなってしまうのだが。

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