赤髪の白雪姫【１０】 (ページ8)

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　　　　〜陛下帰城(８)〜ページ8

ヒサメとミツヒデの合間で、無言の微笑み合いが続けば、ふと何かを思い出したようにミツヒデの後ろへ回り込み

「これはこれは、クレアどの。めかし込んでどちらへ？何なら彼の腕じゃなくて僕の腕に掴まるといい、何処へでもお連れするよ」

『…………いえ、間に合ってますヒサメどの』

「でも惜しいな。僕のために着飾ってくれたのかと思ったよ。昔の約束、覚えてる？」

『………ｯ…』

まさか自分にまで火の粉が飛んでくるとは思ってもみなかったクレアは、ヒサメに簡単に右手を掬いとられると、手の甲に口づけを落とし微笑んでみせる。あの頃より幾分か大人になったのだろう、うんざりした表情ではあるものの、払い除けるを我慢した。

「なっ…ヒサメどの」

「……」

「妬いた？」

ミツヒデの反応にはお構いなく、木々へと振り返ったヒサメに彼女は緩く首を横に振った。

「そ。それは残念。」

『そろそろ離して頂けませんか』

手の甲に口づけを落として解放されると思いきや、そのまま手の甲を親指で撫でられ続けている事に流石に痺れを切らしてきたとこで、衛兵の一際大きな声がその場で響く。

「各隊の警護配置について確認を行う！隊長・副隊長各位紋章前へ！」

「じゃあ、また顔合わせると思うけど。ああ、ゼン殿下によろしく」

「はい」

はぁ…と深い溜め息をついたのは、クレアだけではなかった。

『一気に疲れた』

「おまえは良く耐えたよ」

着慣れぬドレスな上に、苦手な人物からの接触に意気消沈していたクレアの頭を撫でるミツヒデに、木々は肩に手を置いたのだった。

――― 戴冠式当日 ―――

「クレア、何度も言わん一度きりだ。…家族の務めをしっかり果たしてこい、それだけだ」

『…はい、それは勿論です』

「ついて来い、殿下の所まで送ろう」

朝早くから呼び出されたかと思えば、特別何か伝える事があった訳でもなかったようで戴冠式用に仕立て上げられたドレスへと身を通せば、いつもだとうざったく感じるドレスの重みさえ少し軽く感じる。

まさか彼すらも、自分に腕を差し出す事になろうとはこれっぽっちも考えていなかっただろう。自然と差し出された腕にそっと腕を絡めると歩調までゆっくりしたもので、道すがら視線を感じるのは仕方がない。

「私では不服か？」

『…不服というより、身が引き締まり、光栄です』

「ほぉ、言うようになったではないか。」

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