〜宮廷薬剤師(5)〜 ページ42
「……怒ったのかな」
『白雪の事?』
「…………おれなんでか、人の事はよくわからないんです。おれの理解力が人に子供扱いされないくらい、異質だからかな」
庭へつくと三人で木の根本に座ると、ポツリポツリと話すリュウ。
「ややこしいな、あいつをわかりたいんだろ?」
「え?」
「だったら深く考えるのは遠まわりだ」
『普通に仲良くなればいいんだよ』
ね?とゼンに言えば、そういことだ。とゼンとクレアは腰を上げる。
「お前が子供じゃなきゃなかったら、こんな助言してやらないけどな?」
『だってさ、じゃあたしたち行くねー』
あ、そうだ。と不意に立ち止まったクレアにリュウは首を傾げた。
『知ってると思うけど、あたしはクレア。ゼンの側近で、白雪の友達。君が白雪と友達になったら必然とあたし達は友達だからね』
じゃ、頑張ってねーとリュウの目線に合わせて話した後ゼンを追いかけていってしまった。
「……」
その頃白雪は……
「白雪君、さっきの患者の記録済んだらちょっといい?」
ガラクは、二冊の薬歴を白雪に差し出す。
「ーこれ、ゼン殿下と、クレアの薬歴。私の判断で出してきたわ」
「ゼン殿下とクレアさんの?」
「君は薬室の誰よりあの二人と一緒に居る事が多いからね、急場の対応の為に見ておきなさい」
二冊の薬歴を受け取った白雪は、さっそくリュウの部屋でそれを見ることにした。
「この辺りは…二人とも怪我の薬だ。剣の稽古での擦り傷に捻挫。深夜城壁より落下し打撲…ゼンなぜ城壁に。」
クレアの部分には、救助の際に擦り傷。と書かれてあり、一体何をして城壁なんかにと、思う白雪であった。
「こっちは普通の薬歴じゃない?何だろ…」
薬歴書はあれだけではなかったようで、他のものも手に取ってみた。
「ゼン十三歳、クレアさん十三歳…中毒症状と経過…?」
読み進めていけば、二人が服用した毒薬投与の記録が記されていた。
二月五日
投与より七時間後発熱。
呼吸に浅い乱れが見られるが
言動に異常なし
三十一時間後安定
五月十一日
投与直後 歩行困難
ゼン 三時間後解毒指示
クレア 五時間後解毒指示
七月一日
十月五日
発熱に次ぎ全身に刺すような痛み
黙ってこれらの文章を黙々と読む白雪は、ゼンとクレアの言葉を思い出していた。
ーゼンもあたしも、多少の毒は平気ー
ー毒には少し慣らされててねー
初めて出会ったとき、二人が自分の代わりにあの林檎をかじって倒れたときの事を思い出した。
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紅羽(プロフ) - 侵入者(2)の最後の方のハルカ侯爵の台詞で「第二王子付き側近の」のあとの夢主の名前が変換されていませんでしたよ!とっても面白いです!これからも応援しています!! (2018年8月2日 13時) (レス) id: de0e7143c3 (このIDを非表示/違反報告)
アキラ(プロフ) - 図書館戦争の続きが気になります (2017年8月28日 12時) (レス) id: 4d7851a43c (このIDを非表示/違反報告)
クレア(プロフ) - ゆりなさん、コメントありがとうございます!いまは、少し更新をお休みしてますが、これからも応援宜しくお願いします! (2016年4月2日 21時) (レス) id: 4a23c0f44d (このIDを非表示/違反報告)
ゆりな(プロフ) - 何回読んでも飽きずに楽しませてもらいました!!途中にある絵も最高でした!オビかっこいい。。。クレアさんの書く作品大好きです。これからも応援してます! (2016年4月2日 21時) (レス) id: 46ce333a3a (このIDを非表示/違反報告)
クレア(プロフ) - かぷさん» 応援ありがとうございます!読みやすいと言っていただけて光栄です!私の小説から原作を好きになって頂けたんですか!感謝感激です!これからもコメント頂けると嬉しいです! (2016年2月12日 1時) (レス) id: 4a23c0f44d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クレア | 作成日時:2014年10月7日 0時