〜城内試験(5)〜 ページ34
庭の奥へ奥へと進んでいく人影は、言わずとも見るからに怪しい。
『んー、受験者かな』
「だろうね、ほら」
『とりあえず、さっきの第三薬草園戻ろうか。閉じ込められてるかもしれないし』
人影が行き着いた先は第一薬草園。受験者だったか。と呟くオビにクレアは夜中だから、報告は明日でもいいよね。顔も覚えた事だし。と、話した。
「お嬢さんの担当してる薬草園だったりして」
『そんな事あるわけないって…』
先程通った道を引き返して、第三薬草園へ向かえば、何やら物音がする。やはり中に誰か居るようだ。
「やっぱ、誰か居るみたいだね」
『しっ、この声…ちょっと、こっち』
「あ…主とお嬢さん」
『ほんとに白雪の担当してる薬草園だとは…でも、なんでゼンが?なんか手伝ってるみたいだし』
人の声がしたので、裏から隠れて覗くと白雪と此処に居てはならない筈のゼンの姿があった。
「あちゃー、まずいんじゃないかい」
『かなり、まずいけど。二人ともなんかかなり急いでない?』
「クレア嬢、行かないのかい?」
『ゼンも居ることだし、大丈夫でしょ』
それにあたしも乗り込んで手伝ったりして、試験官に見つかったら、ね?と告げるクレアに、あぁ…と答えるオビに行こうかと静かにその場を離れていく。
「二人っきりにしてあげるんだ?いいのかい、いつもなら主とお嬢さんを取り合うのに」
『まぁね。前にオビが言ってたでしょ、白雪はゼンの為になりそうだって。あれ、あたしもそう思うんだよ、悔しいけど』
「言ったねー確か、よく覚えてるね」
『記憶力良いからね。それに白雪にとってもゼンの存在は特別な感じがするから』
空を見上げながら、一つ伸びをしてオビに言えば、優しく微笑まれた。
『何よ。』
「いや、クレア嬢って表情がころころ変わって面白いなーって」
『子供っぽいって言いたいわけ?』
「いや、でもお嬢さんと主の事を思って話す顔は初めて見たなって」
『はい?』
少し前を歩いていたクレアは、立ち止まってオビの顔を振り返り見た。必然的にオビも立ち止まる。
「そういう優しく笑う事もあるんだなって」
偉く真面目に話すオビの目線に耐えれず、慌てて目を反らすクレアに、オビは彼女の右頬をつねる。
『痛ッ…いひゃ、い。つねるな…!』
「ほら、行くよー」
で、その綺麗な不思議な髪の事教えてよ。陽が落ちて純白に変わった髪をさらりと撫でると、先を歩いていってしまった。
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紅羽(プロフ) - 侵入者(2)の最後の方のハルカ侯爵の台詞で「第二王子付き側近の」のあとの夢主の名前が変換されていませんでしたよ!とっても面白いです!これからも応援しています!! (2018年8月2日 13時) (レス) id: de0e7143c3 (このIDを非表示/違反報告)
アキラ(プロフ) - 図書館戦争の続きが気になります (2017年8月28日 12時) (レス) id: 4d7851a43c (このIDを非表示/違反報告)
クレア(プロフ) - ゆりなさん、コメントありがとうございます!いまは、少し更新をお休みしてますが、これからも応援宜しくお願いします! (2016年4月2日 21時) (レス) id: 4a23c0f44d (このIDを非表示/違反報告)
ゆりな(プロフ) - 何回読んでも飽きずに楽しませてもらいました!!途中にある絵も最高でした!オビかっこいい。。。クレアさんの書く作品大好きです。これからも応援してます! (2016年4月2日 21時) (レス) id: 46ce333a3a (このIDを非表示/違反報告)
クレア(プロフ) - かぷさん» 応援ありがとうございます!読みやすいと言っていただけて光栄です!私の小説から原作を好きになって頂けたんですか!感謝感激です!これからもコメント頂けると嬉しいです! (2016年2月12日 1時) (レス) id: 4a23c0f44d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クレア | 作成日時:2014年10月7日 0時