【銀魂】 空 蝉 【高杉晋助】

名字呼び ページ41

それは、自分でも密かに気にしていたことだった。


無言の俺を気にせず、三条は尚も言葉を重ねる。


「ヅラの字は基本的に名字呼びのようだが、銀の字や辰の字は下の名で呼ぶことが多いだろう？それだというのに何故お前だけ……」


率直に答えるとするならば、“うるせェ黙れ”なのだが、俺を貶めるつもりで訊ねているのではなく、純粋に疑問に思って訊ねているようなので、辛辣な発言をするのはどうにも躊躇われた。


代わりに、重い息を吐く。


「……お前は余計なとこばっか目につくんだな」


諦めにも似た呟きは、三条の耳には届かなかったようだ。


「名字の方が呼びやすいから、なのだろうか……」


「それ、わしも前まで気になっちょったところじゃ」


逃げたはずの辰馬が戻ってきた。


「お前……」


どれだけ図太いと、平気な顔をして会話に入れるのか。


怒りを通り越して呆れた俺は、制裁を加えるのをやめた。……今だけだが。


「そういや、前に金時に理由を聞いたことがあったんじゃが……何と言っちょったかの……」


「そうなのか？頼む、思い出してくれ」


認めるのは癪だが、俺もその理由とやらが気にならなくもなかったので、辰馬の言葉を待つ。


「ええっと……たしか……あれはわしが金時たちに出会ったばかりの頃……」



─────
──

「晋助ー！！晋助ー！！……あれ、帰っちょらんのかの……？」


宿営地に戻ってきたわしは、何か用があって高杉を探していた。


「高杉ならいねェぞ」


そこへ、金時がやって来た。


金時は少し笑いながら、


「お前、アイツのことなんで晋助って呼んでんの？」


と言った。


「それゃわしがアイツのダチじゃからに決まっちょるじゃろ。……おまんはなんで幼馴染みなのに名字呼びながか？」


「それはな、俺の優しさだよ」


ニヤリと笑って、続ける。


「ほら、メシ作るときとか『美味しくなーれ』って言うと旨くなるっつーだろ？それと同じで、『高過ぎ！高過ぎ！』ってアイツに向かって言ってやったら、今はチビなアイツもいつかデカくなるかもしれない……という0.0001%の可能性にかけて呼んでやってんだよ」


──
─────


「……という話だったぜよ」


真っ当な理由だとは思っていなかったが、ここまでろくでもない理由だったとは。


……やっぱ今すぐ制裁を加えてやる。


「もう、あの話を聞いた時、わしゃ金時の優しさに感動し───」


「辰馬ァ、まずテメェをぶった斬る」


「えっ！？なんでじゃ！？わし何も──いああああああああ！！」


怪鳥のような悲鳴を上げる辰馬を追い掛けた。

要するに→←制裁を加える

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