【銀魂】 空 蝉 【高杉晋助】

硝子のような ページ24

三日ほど前、夜の作戦会議の後のことだった。


「そういや高杉、この前の攘夷小町っぽい奴、どうなった？」


それは興味があって訊いたというよりかは、話すことがないから暇つぶしに訊いたという雰囲気だった。


銀時に三条の話をした覚えはない……と訝しんでから、化け天人騒動の前、俺が負傷して気を失った三条を宿営地に連れて帰って来たとき、コイツもいたことを思い出す。


「攘夷小町っぽい奴？」


俺が答えるより早く、教本を眺めていたヅラが眉根を寄せて、首をひねった。


「そりゃどういう意味じゃ」


時間差で辰馬も食いついてくる。


俺はどう話したものかと考えあぐねながら、とりあえず本物だったということを伝えた。


「ふーん、そうなんだ……って、え！？本物ってそれマジ！？」


「こんなことで法螺吹いてどうすんだ」


「おまんの妄想じゃのうてか！？」


「んな妄想しねェ」


「で、では未亡人子持ちという噂は本当か！？」


「……テメェはどこに興味持ってんだ」


予想外に興奮した様子の三人に、内心気圧されながらも、続ける。


「年は俺達とそんな変わんねェみてェだったしな、未亡人でも子持ちでもねェだろうよ」


「そうか……」


ヅラは溜め息と共に、大きく肩を落とす。コイツの性癖は、長い間付き合っている俺と銀時も未だ掴めていない。


「お前、喋ったの？」


「嗚呼」


「どげな奴じゃったんじゃ？」


どんな奴かと聞かれても、はっきりこうだと言えるような単純明快な奴ではない。


物静かだが、その戦いぶりや内に秘めたものは苛烈で。

憂いを帯びた儚さを感じさせるのに、発する言葉は時々鋭さを持つ。


そう。例えるなら────


「───硝子(ガラス)みてェな奴」


割れてしまいそうな儚さ。凶器にもなるような鋭さ。


硝子が高温で熱されて作られるように、三条も今まで駆け抜けてきた人生の中で過酷な目に遭っているように感じられた。


それゆえに簡単に割れない、したたかさもあるのだろう。


「……おまんは難しいことを言うのう」


苦笑いを浮かべる辰馬に、物思いから引き戻された。


「さすが高杉、ポエミーだな」


「俺にはよく分かんねェや」


あっけらかんと言ってのけた後、嫌な予感を感じさせる笑みを刻み、銀時が言った。


「っつーことで、今度紹介してくんない？」


また面倒なことが増えた。

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