帰還 ページ20
5分ほどで俺は志士達が集まっている場所に辿り着いた。
「あ!高杉さん!」
腕に包帯を巻き直していたヅラの部隊の志士がいち早く俺に気付いた。
すると、他の連中も俺に気付き、口々に“生きてたんですね!”と言った。
昨夜の内に俺は死んだことにでもなってんのか。
「ご無事で何よりです、総督!」
鬼兵隊の連中がすかさずやって来て、無邪気に笑った。
「お前らも無事だったんだな」
「はい、……でも、__の部隊が……」
そいつの口にした名は、昨晩、俺が看取った男の名だった。
息を吸い込み、口を開く。
「__の部隊はやられた」
一瞬の沈黙。皆が息を詰めた空気。
やがて、
「……そう、ですか……」
誰もそれ以上のことは言わなかった。
「あ、高杉じゃん」
続く重苦しい沈黙を破ったのは、銀時の声だった。
見れば、ヅラと連れ立ってこちらに歩いてくる。
鬼兵隊の連中は潮時だと思ったのか、頭を下げつつ俺の前から去った。
「死んでしまったのかと思ったぞ」
俺のすぐそばまでやって来ると、ほっとした様子でヅラが言った。
「たった一晩いなかったぐれェで決め付けんじゃねェよ」
「お前は消えた側だからそう言えるのだ。俺達、消えられた側の身にもなってみろ。俺も坂本も、お前のことが心配で心配で、夜しか眠れなかったのだぞ」
「それは心配してるって言わねェ」
「お前、本当ひねくれてるなァ……。“心配だった”っつってんだから、素直に受け入れろよ。つーか、あれ?」
急に神妙な顔つきになって、銀時は俺をまじまじと見詰めた。
「な、なんだよ」
顔に怪我をした覚えはないが……と考えていると、
「……お前、背ェ縮んだ?」
頬がひきつった。
「言われてみればそうだな……。高杉、お前、背が縮む呪いをかけられたのではないか?よし、俺がシャナクを唱えてやろう」
「……」
「もともと小せェってのに、これ以上縮んでどうすんだよ。ほら、小遣いやるから、脱脂粉乳でも買ってこい」
意地汚い笑みと共に銀時が差し出したのは、缶ジュースか何かのプルトップだった。
「……」
無言でその手を、引っ叩くように払うと、プルトップが地面に散らばった。
「ああ!何すんだよ、高杉クンが落ちちゃったじゃねェか!」
「消え失せろ」
落ちたプルトップを慌てて拾い集める天パ野郎を思い切り蹴った。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
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Physics(プロフ) - ピピコさん» ありがとうございます、ピピコさん……!まさか二作品も私の作品を読んでいただけるとは……!高杉オチということで、なるべく美しい表現をするよう心掛けていたので、その点に触れてもらえて、とても嬉しいです!これからも全力で頑張ります!! (2017年9月4日 20時) (レス) id: 363eb1b3ec (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - コメント失礼します!!文章に綴られている言葉とかが全部綺麗でとても引き込まれました!!夢主ちゃんのキャラクターも好きです!面白くて一気読みしちゃいましたー!!続きも楽しみに読ませて頂きます!応援してます!! (2017年9月4日 15時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
Physics(プロフ) - 零・れいさん» 素敵なコメントありがとうございます!書き方を褒められたのは初めてのことで、嬉しさのあまり思わずにやけてしまいました(笑) 自分の書いた小説を楽しんで読んでいただけることが、一番嬉しいことなので。これからも楽しんでいただけるよう、頑張ります! (2017年8月25日 16時) (レス) id: 28db851a9c (このIDを非表示/違反報告)
Physics(プロフ) - ひなさん» たしかに怪談話って単語を抜いたら乙女ゲーとか少女漫画に出てきそうな台詞ですよね笑。子安ボイスの有効活用というか笑。ヅラの初恋は近所の未亡人らしいですし、未亡人に新しい夫が出来てて「エッ(°Д°)!?」みたいなのありそうです笑。 (2017年8月25日 16時) (レス) id: 28db851a9c (このIDを非表示/違反報告)
零・れい(プロフ) - オリキャラあまり好きじゃないけど、初めてオリキャラ小説でも楽しめました!書き方がとても丁寧で美しくて、尊敬します!! (2017年8月24日 23時) (レス) id: 402be4125c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Physics | 作成日時:2017年8月10日 21時