【銀魂】 空 蝉 【高杉晋助】

ツラ ページ13

“化け狐”と呼ばれ、刀の切っ先を向けられても尚、“先生”は薄い笑みを消さなかった。


「おや、ずいぶんと血の気の多い子ですねえ。晋助、君の知り合いですか？」


様々なことが立て続けに起きて、口がきけない俺の代わりに、三条が抑制された声で応じた。


「もう茶番は終わりだ、さあ剣を取るがいい」


「……私達三人を貴方一人で相手取って勝機があるとでも？」


「さあな。少なくとも、化けの皮を被らねば戦えぬような小心者に負けるつもりはない」


三条の見事な口上に、“先生”はくつくつと笑った。


嘲りを含むその笑い声は、俺の知る先生のものではない。


事の成り行きを茫然と見守っていると、思い出したように三条が肩口から俺を見やった。


「高杉、こやつらは地球人に化ける類いの天人だ。故に斬らせてもらうが、異論はないな？」


分かりきっていたことだったが、いざ他人の口から聞くと、少しの絶望を感じずにはいられなかった。


───やはり、“先生”は偽物。


無力感に襲われた俺は視線を落とし、強く目を瞑った。


───そうだ、もうあの頃には戻れねェ。


だが。


萎えかけた闘志をかき集めるべく、自分を激励する。


───だが、戻れなくとも、取り戻すことは出来る。

だから、俺は戦うしかねェ。


目を開くと、俺は頷いた。


「嗚呼、俺もやる」


俺は右手に下がっていた刀を強く握り直し、三条の隣まで進み出た。


「……いいのか？」


緩みなく三人を見つめながら、三条が低く問うた。


「……いくら偽物とはいえ、こやつらを斬るのは気持ちのいいものではないだろう」


「今さら何言ってやがる。コイツらにケンカ売られたのは俺だ。売られたケンカは買ってやるのが筋ってモンだろ」


ふっと口角を上げた三条から目を逸らし、俺は三人に視線を戻す。


「そういう訳だ。悪ィが、斬らせてもらうぜ」


すると、いきなり“銀時”、“ヅラ”、“先生”の表情が醜く歪み始めた。


「オイオイ……ひでェことするなァ、俺たち仲間だろ？」


「まさかお前がそこまで人でなしだったとはな……」


「私は悲しいですよ、晋助……」


じわじわと広がる負のオーラに、苦笑をこぼす。


「……こりゃ仲間なんてツラじゃねェだろ」


化けの皮が剥がれ、何の装飾もない無機質な白い面をつけた姿が露になる。


正体を現した三人は、一斉に背中の剣を抜き、俺と三条に襲い掛かってきた。

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