藍色 ページ12
“先生”を間にして立った、二人の盟友は俺と刀を交互に見、ぷっと噴き出した。
「お、おま……!何その刀。どんだけ疑い深いんだよ」
「まあ、貴様がそう出るのは予期していたが……なんかこう……シュールだな」
いつものように小馬鹿にしてくる二人に苛立ちを募らせる内に、次第に俺の中の違和感が薄れていった。
「二人とも、晋助に失礼でしょう?いい加減、笑うのをやめなさい」
「なんだよ、ノリ悪ィ。つか、松陽はさー──」
そう言って、談笑を始める三人。
その図は、あの日からずっと俺が夢見ていたもので。
楽しげなコイツらの輪に入っていない自分がひどく滑稽に、そして抜き身の刃を晒している自分がひどく場違いに思えた。
───何バカなことしてんだ、俺は。
息をつき、刀を下ろすと、三人の視線が俺に集中した。
その時、忘れかけていた違和感が一瞬だけ甦ったが、先生の優しい笑みを見た瞬間、その感覚はすうっと溶けて消えてしまった。
「では、行きましょうか」
もう一度、差し出された大きな手のひら。
俺は一歩、三人に近づいた。
途端、ちりちりと、頭の隅で火花が散る。
───違う!これは罠だ!考えてみろ、辻褄の合わねェとこが山程あんだろ!
もう一人の自分がそう叫ぶ一方で、幼い日の自分が呟く。
───罠でもいいじゃねェか。一瞬でも、あの頃に戻れるのなら。
もう一歩足を踏み出そうとした、まさにその瞬間。
「───ようやく見つけた」
いきなり後ろから腕を引かれ、俺はよろけた。
「一網打尽とはこのことか」
涼しげな、凛とした声。
艶のある短い黒髪。
「もう逃がさんぞ、化け狐」
そして、闇の中で藍色に煌めく刀身───。
何の因果か、攘夷小町が俺を庇うように、俺達の間に立ち塞がっていた。
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
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Physics(プロフ) - ピピコさん» ありがとうございます、ピピコさん……!まさか二作品も私の作品を読んでいただけるとは……!高杉オチということで、なるべく美しい表現をするよう心掛けていたので、その点に触れてもらえて、とても嬉しいです!これからも全力で頑張ります!! (2017年9月4日 20時) (レス) id: 363eb1b3ec (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - コメント失礼します!!文章に綴られている言葉とかが全部綺麗でとても引き込まれました!!夢主ちゃんのキャラクターも好きです!面白くて一気読みしちゃいましたー!!続きも楽しみに読ませて頂きます!応援してます!! (2017年9月4日 15時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
Physics(プロフ) - 零・れいさん» 素敵なコメントありがとうございます!書き方を褒められたのは初めてのことで、嬉しさのあまり思わずにやけてしまいました(笑) 自分の書いた小説を楽しんで読んでいただけることが、一番嬉しいことなので。これからも楽しんでいただけるよう、頑張ります! (2017年8月25日 16時) (レス) id: 28db851a9c (このIDを非表示/違反報告)
Physics(プロフ) - ひなさん» たしかに怪談話って単語を抜いたら乙女ゲーとか少女漫画に出てきそうな台詞ですよね笑。子安ボイスの有効活用というか笑。ヅラの初恋は近所の未亡人らしいですし、未亡人に新しい夫が出来てて「エッ(°Д°)!?」みたいなのありそうです笑。 (2017年8月25日 16時) (レス) id: 28db851a9c (このIDを非表示/違反報告)
零・れい(プロフ) - オリキャラあまり好きじゃないけど、初めてオリキャラ小説でも楽しめました!書き方がとても丁寧で美しくて、尊敬します!! (2017年8月24日 23時) (レス) id: 402be4125c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Physics | 作成日時:2017年8月10日 21時