七夜 ページ7
扉を開く音により、自然とそこに視線が集まる。そこには、まだ十歳にも満たないような少女が、扉の影に隠れるように佇んでいた。
「さ、サッチ……」
小さく、少し掠れたような声だったが、確かに
そう聞こえた。ま、まさか……マルコ隊長が言ってた女の子って………？
「こ、この子だよい……」
「予想よりかなり幼い子だった……！！」
嘘だろ……サッチ隊長がロリコンだったなんて……
がくり、と俺はうなだれた。誘拐にしろ、隠し子にしろ……サッチ隊長……失望しますよ………
そんな俺の複雑な心境に気づく様子もなく、サッチ隊長は平然とその子に近づき、話しかけ始めた。
「おいおい、部屋にいろって言っただろ……
ていうか、よく迷わずにここまで来れたな」
「ご、ごめん……なんか暇で……待てなかった」
「ま、別にいいけどな〜……
もうすぐ出来るから、そこの椅子に座って待っ
てな。」
ものすごく、平然と、自然に、話かけていた。
まるで、俺たちのことは気にしてないかのように見える。いや、本当に気にしていなかったのかもしれない。
少女は、こちらを気にしながらも席につき、俺たちと目を合わせないようにしている。
「サッチ隊長ォ……話は終わってねェんじゃねェの
か？
その子は、いったいなんなんだ。
………返答によっちゃ、俺ァ、あんたを軽蔑する
ぜ。」
たまらず、ティーチさんが口を開いた。そうなのだ。海賊だからといって、なんでも好き勝手に
動いて良いわけではない。
それぞれの国に規律や法があるように、俺たち白髭海賊団にも掟はある。いくら隊長でも、掟破りは許されない。
数秒ほどして、サッチ隊長が呆れた様子でため息をついた。その手には、水が注がれたガラスの
コップが握られている。……どうやら、料理は作り終えたようだ。
「……お前ら、なんか勘違いしてねえか？」
「「「………は？」」」
俺たちの反応を見たサッチ隊長は、少女のいるテーブルへと近づき、少女の目の前に持っていたコップ、そして先ほど作り終えたであろう料理を
置いた。
「本当に、食べてもいいの……？」
「おう、サッチさん特製の料理だからな！
ちゃーんと味わって食えよ？」
「い、いただきます……！」
そう言うなり、少女はがつがつと料理に食い付き始めた。サッチ隊長はそれを微笑ましいような
顔で見ている。
「………俺ァ、誘拐なんかしてねえし、隠し子も作
ったことがねえ。
ただ、こいつに飯を食わせようとしただけ
だ。」
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作者名：シヲリ | 作成日時：2019年6月19日 22時
