二十五夜 ページ25
_______なにそれ
「聞いてないよ」
「言う前に君が帰ろうとしたんじゃないか」
頬を膨らませ、ふてくされ気味に神は言った。しかし、今はそんなことどうでもいい。
「あの子は……
Aは、助けがいる状況なの……！？」
人間は、死んだらそこで終わり。そのはず。だから自分で命を絶ってしまおうなんて思う存分人間がいる。
Aは死んだ。私の、目の前で。なのに……どうして？生きていない限り、苦しがることも困ることもないはず、なのに。
ふと、頭にある可能性が浮かぶ。
「まさか……生まれ変わりの力……？」
「そう。しかも、ボクともう一人の神の力が入っ
ているから、一度や二度じゃ終わらない」
真剣な顔で話す神を前に、口を挟むことができなかった。
この時、ひとまず落ち着いて神の話を聞こうと思った。あの子……Aに、何が起きているのかを知る必要があったから。
「単刀直入に言うね。あの子は今、既に生まれ変
わってる。
幸せか不幸かっていうと……残念ながら、不幸の
方だ」
ドクンッと心臓が大きく鳴った。Aは、もう人間が受けるであろう苦しみを十分に、いや、十分過ぎるほどに受けたっていうのに………
「まだ……苦しんだままだっていうの……？」
「……そうだよ、彼女は未だに救われないままだ」
嘘だ。間違ってる。………こんなの間違ってる。
私は頭を抱えてその場にうずくまった。上から見下ろす、神の視線を感じる。ただそれに、無性に腹がたった。
「……もし、お前が本当に"神様"なんだったら………
最低だね」
気がついたら、そう呟いていた。
ああ、いけない子だな、私。あんなにも人の悪口を言ったらダメって、Aに言われてたのに
なあ。
「……確かに、力を与えるだけ与えといて、いざと
なったら、ボクは何にもできない………
うん、君は間違ってない。最低だと思う」
顔を見なくても、神がどんな表情をしているのかが分かった。罪悪感なんてものはない。だってこいつは、Aを傷つけている張本人だから。
私は、こいつが嫌いだ。
「今回だって、ボクは、事の処理を君にやらせよ
うとした。………本当に、ごめん。
もう、顔も見たくないだろう。君の前にはもう
現れないようにするから……」
______ずるい。
なぜだろう、神のその言葉にそう思ってしまった。"ずるい"って……一体、何に対して？
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作者名：シヲリ | 作成日時：2019年6月19日 22時
