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夢主side
止める気配の無かったフロイドだったが、4年生が意識をやった直後に足を退かしてゆらりと立ち上がった。
死んだのではないか、遂にこの学校で犯罪者が…？と心中ざわつき表面上だけの静寂に群衆は息を飲んだ。
「オレの勝ち〜！」
完全な静寂。1コンマ置くと生徒達は心の底からの興奮からくる雄叫びにも似た叫び声を上げた。
その叫び声に全身の皮膚が痺れて、髪の毛が逆立つ気がした。いや髪の毛は実際に逆立ってしまった。突然引火した火のようにぶわりと逆立つので、熱が引いてきた生徒達は案の定気付きざわつき始めた。
「なんだあれ」
「風もないのに揺れてるぞ」
「火、じゃねぇなよ？」
「あんな魔法見たことねぇな」
そのせいかフロイドが私に気付いて視線を私に向けると、私に気付かなかった生徒まで私に視線を寄せ始めた。それもそうだろう、今まで渦中にいた人物が見つめる1点を追うのは頷ける。
どうしようかと髪を手で抑えて、顔を顰めているとフロイドが一瞬ふらつく様に見えた。というか倒れかけだ。
体格差が大分あるが、地面にそのまま叩きつけられる衝撃を十分軽減することくらいできるだろう。そう考えるとフロイドの元へと一直線に走り出した。今や私は好機の的なので何も言わずとも周りの生徒達は捌けて道を作った。
「先輩！」
「こ、えびちゃ、？」
近くまで行くとフロイドは膝から崩れ落ち、前のめりに倒れる。倒れる流れに沿って支えながら地面にそっと下ろし頭だけ膝の上に乗せると、ダメ元でアズール達の方を見上げた。
「…無駄ですよ、うちの寮のモットーは自己責任です。放っておいても死にはしませんよフロイドは」
「おやおやフロイド、また随分と無茶をして…血は綺麗に洗ってから戻ってくださいね」
死なないなら問題ない、そんなとこだろうか。何せここはあの名門校なのだから生徒1人全治させることもわけない。第1、あの生命力を知っている身内ならこの対応も仕方がないのだろう。
とも行かない。いくら身内でも恋人をこんな邪険に扱われては、いい気持ちはしない。ちょっとばかりムッとしてしまった。
「大丈夫です。帰って頂いて問題ありませんよ」
自分より体躯のある人間の運び方くらい知っている。まだ意識のあるフロイドに声を掛けて、背中側にまわる。上半身を密着させると両腕でフロイドの両脇を持ち上げた。足を引きづる形になるが、そのまま保健室まで連れていく。いつもは驚かれるからやらないが、少々驚かせてやりたかったのだ。
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作者名：病み病みスリッパ | 作成日時：2020年6月25日 18時
